『THE LAST SESSION ~with Chu’s Friends』
小坂忠、日本コロムビア
CD(約36分)+DVD(約66分)二枚組、6,050円税込

長年のファンが記念に買い求めることもあるだろう一枚だが、一曲目からサプライズが用意されている。「F.W.Y.」は、プロデューサーの高叡華氏すら存在を知らなかった未発表曲である。2002年に佐藤博の自宅スタジオで録音され、12年の佐藤の没後に発見されたという。

ボーナストラックの「どろんこまつり」は、1976年10月に横浜本牧米軍フットボール場で行われた「AMERICAN POP FESTIVAL VOL.3」での録音というから驚きだ。モノラル録音だが、「小坂忠&ウルトラ」の生命力を伝えるのに遜色があろうか。

ドラマーの林立夫はじめミュージシャン仲間は、一般音楽業界へ復帰後の小坂忠について「25年のブランクどころか、むしろ前よりもすごい」と評したという。しかしその25年はブランクではなく、証しとワーシップの25年だったことは、言うまでもない。「神様によって練り作られたものじゃないかな」とは高氏の談。

それを確認できるDVDには、〝伝説のロック喫茶〟と語り伝えられる「渋谷B.Y.G.」で2021年10月に行われた「OTONA SESSIONS 3 at B.Y.G.」の模様を収録。ドラムに林立夫、ギターに佐橋佳幸、キーボードにDr.kyOn、ベースにtatsu。小坂忠の生前最後のステージにふさわしいメンバ ーのそろい踏みだ。本人が「家族みたいなもの」と語る通り、おのおのが持つグルーブ感のご機嫌な調和を楽しめる。

さらに特別映像として、2021年9月収録の「ラスト・インタビュー」がある。この収録場所は、自身が牧会する日本フォースクエア福音教団秋津福音教会だ。語られる内容は、闘病を味わって見えるようになったものや、生活でも歌と同じように愛を表現することなど、証しそのもの。そうと知らずに観(み)た一般の音楽ファンには、鮮烈な印象を与えることができるのではないか。

最後まで伝道者であり礼拝者であった小坂忠の生き方が、より多くの音楽ファンの心にとどまり続けることを、願ってやまない。

(3面に関連記事)

2023年12月24・31日号 10面掲載記事)

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