「小さな命の帰る家」 松原宏樹代表 講演

この子どもたちをあたたかい「家庭」で育てたい

大阪キリスト教連合会の研修会として、「小さな命の帰る家」代表の松原宏樹氏の講演会「小さな命の帰る家~障がいや難病の赤ちゃんの最前線~」が11月17日に大阪市の大阪クリスチャンセンターで開催された。

講演する松原氏

牧師だった松原氏を駆り立てたのは、2010年に起きた2児餓死事件のニュースだった。
「子どもたちを助けたい。そのためには、母親たちを支えなければ」
教会に幼稚園を併設し、始めたさまざまな取り組みが実を結ぶ中で、次の課題が見えてきた。生まれてくることを許されなかった生命――人工中絶の問題である。

統計上、国内の人工中絶は年20万件。しかし、中絶薬の消費量はその3倍に及び、実際には60万件を超えると推定される。この数は日本人の死因第1位であるガンで亡くなる年37万人よりもはるかに多い。
県の認可を得て特別養子縁組のあっせんを始めた。駅にチラシを置き、望まない妊娠に悩む女性に呼びかけ、懸命の取り組みを進めるうちに、さらに大きな問題に直面する。それは障がいを持って生まれてくる子どものケースだった。

胎児に障がいの可能性が分かると、大半が人工中絶を選ぶ。診断を機に、望んでいたはずの妊娠が望まない妊娠に変わることも少なくない。障がいを持つ子の特別養子縁組が成立することはほとんどなかった。
障がいを持つ子の特別養子縁組に働きを特化させた。松原氏には心に決めていたことがある。
「引き取り手が現れない重い障がいを持つ子がいたら、自分が引き取ろう」

その決意どおり、松原氏は重い障がいを持つやまちゃんとえまちゃんの親になった。しかし、常に介護が必要な二人を育てるのは、覚悟していた以上に大変だった。
「やまちゃんの親になって、それまでしていた仕事の半分ができなくなりました。えまちゃんを引き取って、9割できなくなりました」
松原氏は牧師を辞すことを決意する。

「私の代わりの牧師は見つかるでしょう。でも、この子たちのそばにいてやれるのは私しかいない」
重い障がいを持って生まれてきた子どもたちを「あたたかい『家庭』で育てたい」。その一心で松原氏は今日も子どもたちに寄り添っている。

この日の講演会の動画が公開中(URL:youtube/OjZA5T7sPbc)。
松原氏の著書『小さな命の帰る家』(燦葉出版社)も先月出版された。
「小さな命の帰る家」の働きについてはウェブサイト(URL:www.chiisana-inochi.org/)から。

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