河野 優 石神井福音教会協力教師、前日本同盟基督教団法人事務主事
各々の所属教会において、牧師交代時の引継ぎはどのようになされているだろうか。牧師など教職者にあっては、自分が教会を辞する時には後任者にどのように引き継ぐか、普段から意識しているだろうか。牧師の歩みは永遠ではなく、教会に集う一人ひとりの歩みも永遠に続くものではない。教会もまたしかりではあるが、それでも主が再び来られるその時まで教会は歩み続ける。そのために、群れを牧する牧師の働きを適切に引き継ぐことは重要である。
では、具体的にどのようなことを引き継ぐのか。自分自身の経験やこれまで見聞きした諸教会の状況から考えると、おもには教会の活動状況や文書記録、不動産など財産に関する情報、各種契約や宗教法人関係の書類など事務的な事項、そして牧会にかかわる事項があげられる。以下、思いつくままに挙げてみたい。
文書記録や資料について。教会規則(最新版)、会員原簿・名簿、役員会・教会総会等の議事録、週報・月報・年報、会計報告書類、教会の記念誌、活動写真などがあげられよう。このような記録があるというだけではなく、すぐに見られるようになっているかが大切である。教会の歩みや運営について客観的に確認するための基礎資料となる。
教会施設に関する資料について。所有であれば土地と建物の権利を証する書類(権利証や登記識別情報通知など)、竣工(しゅんこう)図面など最新のものを含む建築図面、確認済証や検査済証、境界確認書類などである。売却や取り壊し、大規模修繕の際などに必要となるので、しっかり管理しておきたい。
その他の書類として各種契約書、火災保険などの保険証券、墓地や霊園の使用許可証、通帳(全口座情報と名義など)、電話やインターネットなどの契約書や管理のための情報である。これらは教職者が代表者の場合、変更の手続きが必要になるので、それぞれの内容と変更手続きの要否などを確認しておきたい。
宗教法人関係の書類について。宗教法人法第25条による備付書類、つまり規則認証書、規則変更認証書、役員名簿、財産目録および収支計算書、境内建物に関する書類、責任役員会議事録、事務処理簿などである。これらは法定書類で、常時確認できるように備えておくことが義務付けられているので当然保管されているものと思う。しかし、規則や認証書の紛失を時々耳にするので、その場合は所轄庁に謄本を請求するなどしておくことが必要である。
以上の資料については、できる限り役員会などでもその所在や内容を共有しておくことが望ましい。教職者が突然召されるなどの不測の事態が生じても対応できるからだ。
これらに加え、牧会にかかわる事項がある。それは、牧会上引き継ぎの必要な信徒・求道者に関わる事、教会特有の事情や伝えておくべき事などである。なお、牧会にかかわる事の扱いは最大限の注意が求められる。引き継ぎ方法(文書、口頭など)も含めて、引き継ぎ内容が漏洩(ろうえい)するなどのないよう、注意しつつ工夫して行うことが必要である。加えて、後任がおらず無牧になってしまう場合などは、牧会に関することが引き継げなくなってしまうので、対策を考えなければならない。
教職者の奉仕は「やめる」でなく「つなぐ」
奉仕しながらやめることを考えるのではなく、あくまでこの働きを「引き継ぐ」ために、必要なことをイメージし、備えておくことが重要である。教会の歩みは一人で走りきるマラソンではなく、タスキをつなげて走りきる駅伝のようなものである。中でも教職者はタスキを渡していく意識、教会における働きを引き継いでいく意識を常に持つ必要がある。その教会に骨をうずめるとしても、その働きはいつか後任に引き継いでいかなければならないのだ。いま、引き継ぎの備えはできているだろうか。

《連載》教会実務を考える