8・15特集 ミサイルよりもおむすびを 寄稿・岡田有右
寄稿・岡田有右(バプ連盟・那覇新都心キリスト教会協力牧師)
遺骨収集ボランティア具志堅隆松さんの映画「骨を掘る男」が全国上映中だ。辺野古新基地建設の埋め立てに、沖縄戦の激戦地南部の遺骨混じりの土砂を用いることに、彼は「死者の霊を冒涜することだ。二度命を奪うことになる」と訴える。県庁前でのハンガーストライキでは、知事に向かって「助けてぃくみそ~れ(助けてください)。これはあの日奪われた命の叫び、遺骨の叫びです。知事よ、あなたには止めることのできる権限がある。助けてぃくみそ~れ」と、マイクで叫ぶ。
「台湾有事」を煽(あお)り、琉球弧(奄美大島から沖縄、台湾までの弓状に連なる数多くの島々)が軍事要塞化されている。次々と自衛隊の駐屯地が建設され、与那国島、石垣島、宮古島、奄美大島にミサイル・弾薬庫・レーダーが配備されている。近くには民家がある。更に北大東島にレーダー部隊が配備の予定だ。専守防衛を放棄し、相手基地・都市を攻撃できる中距離弾道ミサイルが配備されている。また民間空港と港を利用するために特定利用空港・港湾に指定し、那覇軍港を返す代わりに、浦添市のサンゴ礁の海岸を埋立て、軍港にして米軍に提供する計画も進行中だ。生活のすべてを戦争に巻き込んでいく。
すでに自衛隊の司令部は地下に潜り、島々にはシェルターの計画が進められている。住民は1週間かけて船と飛行機で九州各県に避難する。沖縄「本島」は米軍基地があるため住民避難は考えられていない。自衛隊那覇駐屯地内病院は、負傷した兵士たちを受け入れるために新しくされる。自衛隊員と米兵が共に輸血できるように準備している。
構造的暴力に圧される
政府が沖縄県に黙っていた性暴力事件が公にされた。米軍嘉手納基地所属の空軍兵長(25歳)による少女拉致不同意性交事件。キャンプシュワブ基地の海兵隊上等兵(21歳)による性的暴行目的で女性の首を絞めた傷害事件等。在日米軍基地の沖縄への過重な集中がそうさせている構造的暴力だ。安和桟橋でのダンプカーによる死傷事件。辺野古埋立ての土砂はダンプカーで運ぶだけでは足りず、桟橋から船で運んでいるのだ。抗議中の女性と警備員の男性が巻き込まれた。
性暴力事件を受けて、嘉手納基地前での緊急抗議集会で29歳の女性がマイクを握った。「この問題は沖縄だけではなく、日本全体の問題なんです。沖縄の痛みに気付いて欲しい」
同じ過ちを繰り返すのか
野宿の方々を訪ねる「夜回りチーム結(ゆい)」の働きが23年目を迎えた。話を聞き、その方の生き方を共に考えたいと願いつつ。毎週木曜日の夕方、ボランティアが教会に集い、おむすびを握り、みそ汁とお湯を持って那覇の街に出かけて行く。
夜回りで出会ったYさん(故人)は、学童疎開船「対馬丸」に乗る予定だったが、後発となった。「対馬丸」は米軍潜水艦の魚雷に沈められ、友は800メートルの海底に今も沈む。Yさんは熊本から故郷に帰ったが、見送ってくれた家族は一人も残っていなかった。Yさんは野宿を余儀なくされた。
2023年深夜、「北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられる。建物の中または地下に避難してください」と、Jアラートが鳴った。路上生活者はどこに避難すればよいのか、、、、、
(2024年08月11日号 04面掲載記事)