第15回:教会が更地を取得するとき

河野 優 石神井福音教会協力教師 前日本同盟基督教団法人事務主事

「非課税手続き」に求められること

 教会が駐車場用地や会堂建設用地などの「土地」を取得することがある。今回は特に「更地」を取得する際に心得ておくべきことについて見ていきたい。

 なぜ「更地」の取得を取り上げるのか。それは特に非課税との関わりにおいては、土地付き建物の取得とは異なる注意を必要とすることによる。通常、不動産を取得し使用する場合には、登録免許税・不動産取得税・固定資産税が課されるが、教会(宗教法人)が「もっぱらその宗教の用に供する」(教会が自らの宣教活動のために使用する)場合には、所定の手続きをとることでそれらは非課税となる。

 この非課税手続きは原則としてその物件の「現況」を実際に見て、その「用途」が宗教活動のために実際に使用されていることが要件になる。ところが、更地の場合は「現況の用途」が現実としては確認できない(しにくい)ため、すんなりと非課税にならない場合もあるのだ。現況が更地だと、その土地が何に利用されるか一見してわからないため、非課税を証明するためには、その手続きにおいては必然的に行政から補足資料などを求められることになる。

 例えば駐車場用地を取得する場合には次のようなことを確認されることが多い。それは、現在所有する敷地の駐車可能台数、取得用地の駐車可能台数、利用者数・信徒数、料金の有無、礼拝施設からの距離、舗装の有無、看板設置の有無などである。さらには、施設・活動の規模に対して、取得する不動産の規模が過大でないことを非課税証明の要件として明記されていることも多い。

 規模が過大であるかどうかを行政側がどのように判断できるのか、その妥当性については議論の余地があるように思うが、とにかく細かく確認されるので、教会としてはそれらを認識したうえで取得手続きを進める必要がある。特に上記の内容に加えて、駐車場の配置予定図面や舗装、看板設置などの計画についてもできる限り整えておくことで、手続きはスムースに進みやすくなる。

 また、会堂建設用地を取得する場合にも、取得段階である程度の建築計画を備えていることが求められる。中古建物を取得・リフォームして使用する場合などと同様に、建築図面や見積書、工事の工程表、できれば工事請負契約を交わす段階まで整っていれば、基本的には非課税の証明を受けられる可能性が高いと言える。

 しかし一方で、具体的な建築計画が全く白紙の状態で、用地のみを先行取得するような場合は非課税の証明を受けられない可能性が高くなる。その場合には、先に挙げた不動産にかかる各種税金が課されることになるため、教会ではそれらを想定した費用負担と予算準備をしておく必要がある。固定資産税については毎年課税されるもので、現実に会堂が建設・使用されてようやく翌年度分から非課税になることから、着工までに複数年を要する場合などは、その費用負担は軽くないだろう。更地の場合は居住用の建物などがある場合に比べて、固定資産税額が高くなることも覚えておくことが必要だろう。一般的な戸建て住宅などが建つ土地は、更地の場合に比べて税額が一定割合減免されているからだ。

 加えて、登録免許税や固定資産税は還付(納付した税金をあとで返してもらうこと)ができないと聞くが、不動産取得税に関してはいったん納めて会堂建築後に還付請求の手続きができた事例や、請求できる期間内(5年)に会堂建設が予定されるのであれば課税を保留にして建築した段階で非課税申告をすることで済んだ事例もある。

 いずれにしても、教会が、主にささげられた献金をよりふさわしく用いるためにも、更地の取得においては以上のようなことを事前に確認した上で取り組むことが必要である。

《連載》教会実務を考える