天国に送った夫と育んだ教会ビジョン 喜びも苦難も共有する場に

 建設中のチャペル
円内はルサンさんと8人の子どもたち、
後列左から二人目がルサンさん

 島根県東部の雲南市木次(きすき)町。古くから交通の要衝であり、
川や緑の豊かな自然があり、古代の伝説なども根深く残る地域だ。このまちの山林に、作りかけのチャペルがある。穂垣ルサンさん(米国改革バプテスト教会宣教師)と8人の子どもたちが、ここで地域に根差した宣教にチャレンジしている。【高橋良知】

 ―しっかりとした神学的土台をもって、教会に集う人々が成長し、健全な家族関係、コミュニティーを築けるようにしたい。単なるイベントの場としてではなく、共に生活し、喜びも苦難も共有する場としたい。結婚式にチャペルを貸し出して、式で真実の愛を伝えたい。誰もがくつろげるカフェ、家族で楽しめる農場を開放し、羊、ヤギ、ガチョウ、ニワトリ、アヒル、ミニチュアホースを飼って家族で楽しんでもらいたい。持続可能な農園で人と環境に良いものにしたい―


 「これらは、伝道活動のように聞こえないかもしれない。私たちはこの地域に合わせてこのようなアイデアを取り入れた形での働きを意図的にデザインした」とルサンさんは言う。これらのビジョンは、2年前の7月、不慮の事故で天国へ送った夫・裕久さんと共に育んできたものだった。


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 ルサンさんは米国のクリスチャン家庭で育ち、幼いころから、明確な救いの確信をもっていた。大学生の時に、宣教大会で、世界の未伝地域についてビジョンを持った。二期にわたり、SYME日本校で英語宣教に携わった。「いつか必ず戻ってきて、日本人に福音を伝えたい」という思いで、09年夏からテキサスの神学校に入学。そこに一人の日本人の男性がいた。裕久さんだった。


 裕久さんは、広島県福山市で育つ。17歳の時に、両親は離婚し、生活は荒れた。調理師をめざして、料理店で働いていた。米国映画が好きで、英語に興味を持った。映画に日本にはない家庭の愛を感じたのだという。教会の英語教室、米国でのホームステイをきっかけに、洗礼を受けた。―包丁を御言葉の剣に持ち替えて、神様に仕えたい―。同時に献身の思いももった。