キリスト教信仰に基づいた多くの作品を遺した作家・三浦綾子(1922〜1999)の自著9年ぶりの新刊『丘の上の邂逅』(小学館、千470円)が出版された。今年、三浦綾子生誕90周年記念として、単行本化されていなかったエッセイ原稿から、旭川やふるさとに関するものを集めた。既刊書籍の重版、関連書籍、朗読CD出版なども相次ぐ。いくつかの作品は電子書籍で販売もされている。
新刊は旭川市にある三浦綾子記念文学館が取り組んだ資料整理がきっかけだ。文学館は資料整理を3年前から本格的に始めた。そこで約2万500点が未整理であることが分かった。
同文学館では経験豊富な団塊世代の退職者などによるボランティアが積極的に活動する。資料整理には臨時職員も含めてボランティアが25人関わり、2年で資料全体の3分の2の整理が終わった。年度内には完了する見込みだ。
資料整理では14のジャンルに分けて、データベース化した。そのうち新しく見つかった掲載原稿の中には旭川市地元の郷土誌やサークルの会報などに寄せたもので、まだ書籍刊行していないものが約500点あることが分かった。
文学館内の「出版委員会」が企画を考え、ふるさと、風景、思い出の場所に関わるものを集めた。今回の出版は昨年末に原稿を整理し、4月には刊行したいという緊急のものであったことから、なかなか出版社が見つからなかったが、綾子さんの生誕と同じく、創業90周年を迎える小学館が共同企画として刊行を決め、綾子さんの誕生日である4月25日に刊行にこぎつけた。
文学館スタッフの松本道男さん(三浦綾子記念文化財団・専務理事)は「綾子さんは原稿依頼を断ることはあまりなく、一つひとつ丹精を込めて書いていた。自らの小説の登場人物について書いたものや、戦争、憲法、原発について書いたものもあり、今読んでも新鮮な感動を与える原稿がたくさん残されている。せっかくの宝を大切にし、2年に1冊くらいのペースで、ジャンルを分けながら出していきたいと考えています」と語る。
今年、三浦綾子作品・関連書籍では『石ころのうた』『草のうた』(角川書店)、『ちいろば先生物語』(集英社)、『天北原野』(新潮社)が重版。綾子さんの作品から希望と励ましを与える言葉を選んだ込堂一博著『三浦綾子100の希望』、朗読CDの『CD 三浦綾子 旧約聖書入門・新約聖書入門全巻セット』(いのちのことば社)も刊行された。
【高橋良知】
