美を理解する視点(スキーム)普段着の読書 牧師編 第4回 鎌野直人

 私には絵心がない。だけど美術は好きである。
 留学中や海外旅行の際には美術館を頻繁に訪れた。興味のある特別展には夫婦で行く。古代オリエントの芸術作品も見る。東南アジアのきらびやかな寺院や古代遺跡も訪れる。なんとなく美しい。でも、なぜ美しいのか、どのように描けば、どのように刻んだら美しくなるのか、さっぱり分からない。

「にわか学芸員」になる

 ところが、神学校で働いていると西洋名画の解説を頼まれることがある。三年に一度、学生を連れて、徳島県鳴門の大塚国際美術館に行く。そこでは、西洋絵画が陶板に原寸大で焼き付けられ、再現展示されている。かつては学芸員が一時間ほど、キリスト教絵画を中心に神学生向けに解説をしてくれていたが、最近はそれがなくなった。しかたないので、何度も来訪している校長が解説をということになったのだ。ところが、絵心のない筆者は、西洋絵画の勉強をしたこともない。そこで、急場しのぎの「にわか学芸員」となるために手に取ったのが今回ご紹介する『絵を見る技術』である(ちなみに、この準備のためにもう一冊読んだのが、佐藤直樹著『東京藝大で教わる西洋美術の見方』)。

『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』秋田麻早子著、朝日出版社、2千35円税込、2019年、四六判

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