
出演者・会場の全員で、テーマ曲「平和をうたう鳥」を合唱
音楽を通じて平和の重要性を訴え、戦争が終結し復興が始まるよう祈りを捧げることを目的とする「Peace Classic Festival平和音楽祭2025」が5月3日、東京・千代田区の日本製鉄紀尾井ホールで開催された。いのちのことば社主催。収益と募金は「ハンガーゼロ(日本国際飢餓対策機構)」を通してウクライナをはじめ世界の紛争地で行われている人道支援活動に寄付される。
トータルコーディネーターとしてフルートの紫園香を迎え、日本のキリスト教界で活躍するクラシックの演奏家ら11組58人がチャリティーで出演した。指揮の星野誠、ピアノの小堀英郎、ソプラノの高橋美香、三塚直美、バスバリトンの稲垣俊也、そしてウクライナ・キーウ州出身のオクサーナ=ステパニュック、室内楽のユーオーディア・アンサンブルや東京シモンコーラス、そして、紫園率いるフルートアンサンブルのメタモルフォ、紫園とピアノの菅野万利子によるDuo Stella。息の合った演奏は3時間にわたり観客を魅了した。特にフィナーレで観客533人と歌った「平和をうたう鳥」は今回のために三浦真理作曲、紫園香作詞のもと作られ、その旋律と言葉の一つひとつが、聴く人々の心に静かに届いたことを深く感じた。
コンサートの大きな特徴は、ソロ、アンサンブル、合唱が一体となり、異なる楽器や声の調和が美しく表現された点。指揮を務めた星野は、各出演者の個性を引き出すとともに全体の調和を意識しながら、まさに〝ワンボイス〟となってコンサートの最後をまとめ上げた。
音楽家として世界的に活躍するステパニュックのソプラノとバンドゥーラ(ウクライナの伝統楽器)の演奏は、異国情緒を感じさせる美しい旋律で、会場の空気が一変。特にウクライナ国歌を国旗を掲げて歌ったのは非常に印象的だった。透明感のあるソプラノの歌声とバンドゥーラの響きが交わる瞬間は、聴衆に強い印象を与えた。

バンドゥーラを演奏するオクサーナさん

ウクライナ国歌を斉唱するオクサーナさんと稲垣さん(右)
30年以上同じメンバーで演奏を続けるユーオーディア・アンサンブルの演奏も素晴らしく、柳瀬洋(クラリネット)、柳瀬佐和子(ピアノ)、蜷川いづみ(ヴァイオリン)、工藤美穂(ヴァイオリン)、村上信晴(ヴィオラ)、井上とも子(チェロ)による室内楽は、6人とは思えないほど厚いハーモニーを奏で深い音色で観客を魅了。このアンサンブルは技術的に非常に高いだけでなく、情感豊かな演奏によって聴衆に賛美の精神を伝えていた。
合唱では、東京シモンコーラスの迫力ある歌声が会場に響き渡り、場面ごとに変化する感情を音楽で表現。歌唱の力強さ、繊細さがバランスよく融合し、特に「祈り」の部分では、心の奥深くに響くような清らかな歌声に感動を覚えた。
司会を務めた森祐理の軽快な進行も、雰囲気を和やかに保ちつつ、ウクライナ訪問のレポートでは、いま目の前にある現実をありのままに語った。
岩本遠億(えのく)牧師(単立・キリストの平和教会)の平和のメッセージは聖書を引きながら深い哲学的なテーマを提供し、Duo Stellaの音楽とともに聴衆に新たな視点をもたらした。音楽だけでなく、その背後にある物語や思想を感じ取ることができる貴重な時間だった。

岩本牧師のメッセージとDuo Stellaの演奏が組み合わされた
今回の平和音楽祭は、紫園香の呼びかけにより、普段では考えられないような顔ぶれが一堂に会した。音楽と参加者全員の戦争終結への思いが一体となり、多層的な感動を与える素晴らしい体験だったと思う。ジャンルや形式にとらわれない自由な表現が、音楽の力を再確認させてくれ、参加した全ての人々にとって、心に残るひとときとなったことだろう。
(レポート・原島真由美=いのちのことば社ライフ・クリエイション プロデューサー)
(2025年05月25日号 01面掲載記事)
