音楽の究極求めるその先でゴスペルと出会う ゴスペルシンガー 葛葉美奈子さん

父と音楽が「いなくなった」

 葛葉さんは、幼い頃の思い出をこう語った。「父は音楽が好きで、家で生演奏するような家庭で育ち、父と二人で演奏したこともありました。いつも洋楽がかかっていて、当時、父はテープに多重録音をしていました。父のオリジナルにコーラスを入れたりもしていました。一緒に暮らした12年間は、本当に大事な時間でした」


 だが、両親が離婚。父と共にすべての楽譜もレコードも機材もなくなり、家から音楽も消えた。「母は、女手一つで育ててくれました」


 高校一年の時、再び音楽と出会う。「音楽をやらないと死んじゃうほどだった」という葛葉さんは、軽音楽部に入部。在学中はバンド活動に没頭した。卒業後は、コピーライターの学校に通った。「少しでも詞が良くなり、自分の音楽に取り込めれば」というのが理由だった。その後、ある広告制作会社に就職し、しばらく音楽から離れるが、編集業の中でバンドをやっている人の誘いもあって、再びバンド活動を開始。「今度は趣味のレベルでなく、プロフェッショナルを目指そう」と、退路を断つ思いで広告制作会社を退職。「オーディションを受けまくり、プロのミュージシャンとたくさん出会い、自分を売り込んで、とにかくデビューできるように頑張っていました『何らかの形で成功したい…』それが私のキーワードでした」

好きな音楽ルーツがゴスペル

 やがて、ゴスペルと出会う。葛葉さんは、多くのミュージシャンとの出会いの中で「自分が大好きなブラックミュージックのルーツがゴスペルである」と知る。「ゴスペルは一度かじっておいたほうがいい」と、クリスチャンではないバンドメンバーが勧めてくれたので、ゴスペルの本場である、アメリカのニューヨークへ。観光客が行くような教会のイベントに参加し、生のゴスペルを体感した。


 帰国後、「日本でも」と思い、当時、千葉県柏市の逆井福音自由教会で行われていた柏逆井ゴスペルクワイア(後の「オールソウルズゴスペルクワイア」)のワークショップに参加。後に葛葉さんが指導することになるクワイアだが、その時は一度きりの参加だった。同じ頃、クリスチャンでない時から知っていたシンガーの粟野めぐみさんたちが亀有教会でゴスペルクワイアを立ち上げると聞いたので、そちらに行くようになった。そこで初めて、「教会員の方々が迎えるゴスペルの雰囲気」を感じたと言う。2000年のことだった・・・

(次ページで、教会、ゴスペルクワイアとの葛藤、救い、ゴスペルシンガーとしての活動、など)
葛葉さんが日本で初めて参加し、07年からクワイアを指導する「オールソウルズゴスペルクワイア」の25周年アニバーサリーコンサート「あなたといつも喜んでいたい」が12月20日午後3時から、千葉県我孫子市のけやきプラザふれあいホールで開かれる。詳細はURL https://ameblo.jp/ksgc-gospel/で。