大きなものへの誘惑は、小さなことの中にもあることが、一地方の牧師の視点から語られた。「政教分離の会」公開学習会が10月25日、東京渋谷区の新宗会館で開かれた。

「『私は戦争のない世界を望む』─小事に大事を見る」と題して、小畑太作さん(日基教団・宇部教会牧師、「合祀いやです」少数者の人権を求める会代表)が10月25日に東京・新宗会館で話した。
会の初めに「政教分離の会」(政教分離の侵害を監視する全国会議)代表幹事の木村庸五氏は、この週に、高市早苗政権が発足したことを受けてこう概観した。「軍事拡大路線にスライドすることに危機感を覚える人も多いのではないか。靖国神社は軍国主義の精神的支柱となった場所だ。高市氏は当面参拝は見合わせるというが、そもそも参拝を当然と考えている。今後、厳しく監視していかなければならない。司法も首相参拝を止める法的手段に消極的だ。これを乗り越える視点が必要だ。従来は公明党がブレーキ役を果たしたが、今回連立した日本維新の会は、一層右寄りの政策を進めるでしょう」
「小事」が「大事」につながる
小畑氏は、憲法改正、安保法制、脱原発、徴用工問題など様々な市民運動にかかわっている。今年話題になった長生炭鉱水没事故問題に取り組む市民団体の事務局長もこの春まで務めた。「しかしことに政教分離、天皇制問題となると、なかなか話がかみ合わない。なぜ政教分離問題が軽視されるのか、私なりに考えた」と言う。
日本における政教分離問題を2類型に分類した。類型Ⅰは天皇崇敬体制を直接的に再生する政教分離違反。類型Ⅱは天皇崇敬体制の再生を希薄化させる政教分離違反だ。「類型Ⅰの最大の問題は、天皇制問題、靖国問題であり、掘り下げて言うと、戦争準備行為につながっていく。私が日ごろやっているのは、類型Ⅱで「まちのヤスクニ」と呼ばれるもので、自治会による神社への寄付金徴収などがこれに当たる。直接的には天皇崇敬体制を支持しないが、『こんなことぐらい』と言って、慣れさせてしまう。多くの自治会は、市町村などから補助金をもらっている。一方神社は、神社本庁に負担金を収めている。自治会は、いわば行政の政教分離違反を隠す資金洗浄装置のような機能を果たしている。同じような図式は各地の戦没者遺族会にもある」と述べた。
これらの問題の構図を図示した。

「小さな三角形を『お金』とすれば、時系列(t)で積み重なって大きな額になる。右の大きな三角形を「靖国問題」とみれば、その左にたくさんある三角形は、いわゆる「まちの靖国問題」となる。右の三角形を「軍事行動」と見たときは、左の三角形の一つが「靖国問題」となる。小さな出来事は、大きな出来事の前兆や準備となる。その関係性を示したかった」と語った。
(次ページで、「まちの靖国問題」三事例、事大主義の問題、など約2000字)
