教皇を頂点としたローマ・カトリック教会に対して、聖書のみに権威を主張した16世紀プロテスタント宗教改革の中で、幼児洗礼に反対し信仰に基づく成人洗礼を実践した再洗礼派(アナバプテスト)は、その後の教会の歴史において国家から独立した自由教会に道を開いた。急進宗教改革とも言われる再洗礼派が今年で500年を迎え、最初の成人洗礼が行われたスイス・チューリヒで5月にメノナイトなどその流れを汲む人々が集まり、記念礼拝ほかの行事が開かれた。日本から参加した片野淳彦氏(日本メノナイト福住センター)に寄稿してもらった。

聖書に示されたイエスを模範として
排外的な世界「教会と国家の関係」がテーマに
2025年5月29日、世界各地から再洗礼派の流れを汲むキリスト者(主催者の推計で3,500人)がスイスの古都チューリヒに集まった。ちょうど500年前、この街で最初の成人洗礼が行われたことを記念するためである。宗教改革の急進派ともよばれる再洗礼派(アナバプテスト)運動は、当時チューリヒの教会改革を進めていたウルリヒ・ツヴィングリのもとで学び、より徹底した改革を求めたコンラート・グレーベルやゲオルク・ブラウロックらによって始められた。当時は一般的だった幼児洗礼ではなく、自発的な信仰告白に基づく洗礼こそが聖書的に真正であると主張し、この洗礼を通して形成される自由教会(すなわち国家権力から独立した教会)を指向したのである。
