発達障害の子を見ると、昔の自分がそこにいる 翼学院グループ学院長・芦澤唯志さん

東京都葛飾区に拠点を置く(株)ツバサ・翼学院グループは、発達障害、不登校、また〝ギフテッド〟と呼ばれる子どもたちへの学習指導、心理支援、福祉事業を、幅広く展開している。代表取締役で学院長、公認心理師でもある芦澤唯志さんは、自身がADHD(注意欠如・多動性)という特性を持ち、今もその障害と向き合いながら、17年にわたり、3,000人近い子どもたちに関わってきた。芦澤さんに話を聞いた。

芦澤唯志さん
翼学院グループ学院長、東京基督教大学大学院在学

 ――翼学院に通う300人の生徒は、不登校、いじめ、学習が困難な子どもたちで、学校生活や進学や就職で悩んでいます。そういう子たちは、総じて自己肯定感が低いです。
 現在在籍している、ある多動の男児は、学校でトラブルが絶えません。ルールを守らない子などを見ると、注意をしたり、けんかになったりしてしまいます。その子は私立中学の受験を希望していますが、理由は「公立に行くといじめにあってしまうので」。面接指導の時には、そういう自分の一面を言ってしまう。本人は「ルールを守らない子が許せない」という気持ちなんです。「どうせ俺なんかダメなんだから。みんなに嫌われてるんだから、中学校行ってもうまくいかないし、受験で受かるわけもない」と言い出します。
 私は「でも、君は私に会うと手を振ってくれる。私はそれがうれしい。君の顔を見るとうれしいし、ほっとする。受験する学校の先生も君のそういう姿を見れば、きっと僕と同じ感覚になると思うよ」と言って、そこを起点にして面接を組み立てていったら、時間はかかりましたが、ずいぶん話す内容が変わってきました。

 様々な問題の根っこに、自己肯定感の低さがあります。学校などで苦しい思いをしているお子さんを「何とかしたい」と考える保護者が、厳しい言葉をかけると、かえってお子さんにとっての苦しみは増してしまいます。そんな時にどのように声をかけたら良いかなどの「ペアレント・トレーニング」も翼学院で行っています。

互いに関わり合う中で

 発達障害のある子だけの、中学受験向けのクラスも開講しています。一人ひとりが、授業中座っていられない、他者の視線や音に敏感、といった課題を抱えたお子さんです。クラス編成をしたばかりの時には「あの子が嫌だ」とお互いに言い合うような関係でも、学習を通じて思いやりを持つことができるようになり、安心感をもってクラスに居ることができるようになります。
 休み時間は、教室で栽培している植物を囲んで子どもたちと話をしています。学校で「暴力的」と言われている子が、植物や小さな生き物に対する愛にあふれていることがわかった、ということもあります。

 そういう子たち一人ひとりのニーズに本気で向き合っていますが、それは、その子たちを見ると昔の自分を見るようで、自分のような経験はしてほしくない、と思うからなんです。

 (次ページで、「この子たちの居場所を守る」)