高校生の魂に触れる――前hi-b.a.代表 荒井恵理也さんの生涯が残すもの

 高校生時代は、子どもから大人へと移行する不安定な時代。だが将来に限りない可能性を持ち、人生の大切な決心をする時でもある。少子化が言われる教会の中で、彼らを導くリーダーが必要だ。
 半生を高校生伝道に尽くし、昨年37歳で亡くなった荒井恵理也さん(前高校生聖書伝道協会[hi-b.a.]代表スタッフ、バプ教会連合・国分寺バプテスト教会国内宣教師)の歩みから、高校生世代への伝道を学びたい。

確信から献身へ

 1974年、荒井隆志・怜子牧師夫妻(当時JECA・八王子キリスト福音教会)の次男として生まれ、教会で育った。だが中学生時代は、教会に出席する理由が分からず、友人との遊びを優先し、教会から離れてしまった。
 高校1年生の夏休みにhi-b.a.のキャンプに参加し、ヨハネ3章16節からの学び、同世代で「心から悔い改めている人、神さまから深い愛を、素晴らしい恵を受け一歩一歩成長して行くクリスチャン」(「召命のあかし」より)の姿に衝撃を受け、礼拝出席を再開する。さらにhi-b.a.主催のツアーで中国の家の教会を訪問し、迫害の危険にさらされながら、全身で礼拝する信仰者たちの光景を見て、洗礼の決心をした。
 後にキャンプで献身を決意し、東京基督教大学に入学。卒業後、hi-b.a.スタッフとなり、07年に代表スタッフとなった。

高校生を愛する

 隆志さんは視力障害者福音伝道協会の働きに尽力し、教会に障害者を受け入れた。怜子さんもホームレスの人を泊めたり世話をすることが日常だった。両親の姿に学び、恵理也さんも自宅に学生たちを受け入れたり、関わりを積極的にもった。
 『荒井恵理也スタッフ記念誌』からは彼と高校生たちとの関わりがうかがえる。
 卒業生の東條恵子さんは、不安定な時期があった。「その時の私は家庭状況があまりよくなく、家には帰らないという生活をしていました。しばらくすると半強制的に恵理也くんに呼び出され『話したいことない? 話す事』と優しく聞いてくれたのに『なにもない』と反抗的になり、その場にあったティッシュ箱を投げつけ」た。何度か集会で恵理也さんが話しかける中で、恵子さんの心は開いた。「『話す事ない? 逃げるの?』と言われ、もう逃げられないと私は全てを話しました。自分の話しをするのは得意ではありません。聞かれると逃げたくなり逃げていました。それでも追いかけ追いかけ追いかけてきてくれた恵理也くんは、この人なら話しても大丈夫と思わせてくれました」
 現在神学生の橘恵介さんは高校生時代、今までにない疑問や不安にさいなまれた。「何度も何度も、渋月(定期集会)の後に、二人で残って話す時間があった。話したというよりも、僕が一方的に語り続け、それを恵理也君はいつも聞いて、受け止めてくれた。『恵介のためにも、僕からアドバイスを与えることはしない。でも、話を聞くし、一緒に祈るから、いつでも話しにおいで』と言ってくれる人がいたことは、高校生の自分にとって何よりも大きな励ましであり、支えであった。とても人に見せたくないような自分の疑い深い姿でさえも受け入れてくれた」と思い出を語る。

神に信頼する生き方

 2011年3月、末期の胃ガンが見つかり、11月に恵理也さんは妻四季さん(元キリスト者学生会総主事の故片岡伸光さんの長女)と息子永遠くん(5歳)、悠くん(2歳)を遺し、会葬者約1,300人に送られ天国へ旅立った。
 米内宏明牧師(国分寺バプテスト教会)は告別式で、恵理也さんが中心となって作成したhi-b.a.基本理念冒頭の「神に信頼する」を引用し、「恵理也くんはこれを生きていたんだ」と振り返った。彼の病床での信仰についても「神さまはどんなところからでも癒すことの出来る方、その方のなされる最善に自分をささげます、と恵理也くんらしい、主へのぶれない献身」があったと紹介した。
 病気が発覚する直前の昨年2月末、年度最後の定期集会で、恵理也さんが高校生たちに向かい語ったメッセージが印象的だ。「もう一度言います。何度でも言います。あなたの今のそのいのちは、キリストが身代わりに死ぬほどに尊いものなのです。その自分のいのちを愛し、大切にし、与えられた使命を全うするために生きるべきなのです。信じて生きるべきです。生きてほしいのです」
【高橋良知】

hi-b.a.(高校生聖書伝道協会)とは
 1938年、米国ニューヨークでA・B・リードさんが開いた高校(high school)の新生した者たち(born againers)の集まりが始まり。戦後、50年には高校生伝道の宣教師として、K・W・クラークさんが来日し、翌年春から活動が始まった。hi-b.a.出身者には戦後キリスト教界の様々な分野で活躍するリーダーたちが多くいる。活動の中心は毎週開かれる定期集会。賛美、メッセージ、証しがなされる。関東は1都3県で15集会と2つの国際集会、東海は2県で2集会、関西は2府2県で7集会ある。各定期集会のほか土曜日の特別集会ジョイサタデーもある。千葉県に独自のキャンプ場を所有し、長期休暇にキャンプを実施する。そのほか教会での夏季伝道、海外ツアーなど様々な企画がある。卒業生のための研修もあり、卒業生はキャンプや集会で積極的に奉仕している。hi-b.a.の歴史や高校生世代の伝道についての提案、基本理念とその解説が『高校生世代に福音を伝える 日本hi-b.a.60年の歩み、そして未来へ』(いのちのことば社)にある。
https://www.hi-ba.com/