欧米人が日本人の「甘え」考察 『キリストのうちにある生活 日本と欧米の対話の向こうに』 ジェームス・フーストン著


昨年5月、上野の森キリスト教会で開かれた著者のセミナーに参加した。90歳を超えているとは思えないほど頭脳明晰で、豊富な学識から語られるその話は、時に私たちを予想外の世界に連れていってくれた。特に驚いたのが、著者の口から日本人独特の感情である「甘え」についての考察の話が出たことだ。遠藤周作の『沈黙』についても触れていた。日本に対する学識の深さに驚かされた。本書はその時のセミナーの内容や、集った日本人クリスチャンとの対話で気づかされたことも反映している。

 著者は「私たちクリスチャンの信仰は、置かれている文化において、また、パーソナルな関係において、具体的に表される」と文化に着目する。日本文化をあえて選んだ理由は「他のどの文化圏にもまさって、日本は欧米の文化を受容してきたから」と言う。

 本書の試みについては、こう語る。

「この小論は、欧米と日本のクリスチャンが、互いのうちに特別に評価できるものを発見し、互いの文化から学び合うための暫定的な考察です。読者と筆者との対話を通して、それぞれの文化のうちにある行き過ぎの部分が、キリストの福音を歪め、私たちを必要以上に分断しているという現実を発見したい」

 その行き過ぎとは、日本文化で言えば「甘え」が「社会的帰属意識(集団主義)」を強めている点であり、欧米文化で言えば過剰な個人主義だとし、「両者ともに、聖書的信仰を歪めています」と指摘する。そして、「各々に見られる過剰な部分が緩和され、それを真のクリスチャン精神で受け入れるならば、お互いを豊かにし合うことができます」と強調する。

 さて、その考察は「甘え」「義理」「恩」「和」「家」「道」と多岐にわたる。また、それらが欧米文化、さらには聖書的価値観とどう類似し、また違うのかを比較しながら丁寧に見ていく。それは日本人のアイデンティティー、自分自身の物語(ナラティブ)を明らかにしていく作業であり、ゴールは「キリストにある」基本的なアイデンティティーを主張するためでもあるという。本書を通じ、改めて日本人とは何か、客観的に見つめてほしい。 編集部

キリストのうちにある生活 日本と欧米の対話の向こうに』

ジェームス・フーストン著 高橋秀典監修

いのちのことば社

1,512円税込 四六判