東北・エマオが8年の活動を終了 出会いの大切さ“ゆっくり”味わう

初期のワーカーは自転車で被災地に通った

 仙台市、石巻市を中心に東日本大震災直後から支援活動を開始した日本基督教団東北教区被災者支援センター・エマオ(以下・エマオ)は、今年3月ですべての活動を終了する。教団教派を超え、クリスチャンではない人も交え、ボランティアのワーカーは9千人以上が登録参加。スタッフも入れ替わりながら続けてきた。現センター長の小川幸子さんに活動を振り返ってもらった。【高橋良知】

 −最近はどのような働きをしていますか。

 小川 この2年間は、お茶っこと、被災地フィールドワークを中心にしています。エマオが最初から支援している仙台市若林区笹屋敷では、3月9日にお茶っこを延長し、思い出を分かち合う時間を持ちました。若林区の七郷地区仮設出身者に向けては、定期的に同窓会が開かれており、エマオが共催というかたちでお手伝いしています。石巻では仮設住宅閉鎖後、教会や地域の集会所を借りて集会をしています。

 −集まる方々はどのような思いでいますか。

 小川 「エマオが関わってくれてうれしかった」と同時に、「終わるのはさみしい」という声があります。今後も関わりを持つスタッフやワーカーが個人のボランティアとしてつながっていくと思います。被災された方は、普段の話の中で、ふと、被災したときの話になることがあります。話をすることで、癒されるという人もいます。いつも同じスタッフだけではなく、遠方から来た方にも、同じ話を新鮮に聞いてもらえるので喜んでいただけます。

 仮設を出た方は遠い所にお住まいですか

 小川 新しいところでは、近所のつながりが中々できないようです。代々の集落のつながりで生きてきて、集落を越えてのかかわりはあまりありません。同じ集落出身者どうしでも、皆さん若くはないので、少し離れるとお互い訪ねるということはなかなか難しい。七郷同窓会のお茶っこにも車で誘い合ってきています。石巻のお茶っこでは、エマオが車でお迎えにいきます。外に出かけて大勢の人とお茶を飲むのは楽しいことなんです。

 ー皆さん、お仕事はどうなさってますか。

 小川 リタイアした人もいますし、農家を続けている人もいます。ある方は、震災直後は農業をやめようと思ったそうですが、「エマオさんが片付けてきれいにしてくれたので、またやることにした」と。初期のスタッフがやったことですが、今もエマオに対して感謝してくれて、収穫した野菜をいただくこともあります。エマオを支えてくれたみんなの分を代わりにいただいている気持ちです。最初は泥かき、泥出しから始まりました。丁寧に心を込めてやった働きで関係が築かれ、ここまでつながってきたのだと思う。今までの一人ひとりに感謝しています。

 ー地域の状況はいかがですか

 小川 どんどん変わっています。人が住めないところは、復興祈念公園などになっている。工事の関係で道が変わったりしています。フィールドワークで来て下さる方で「エマオが終わっても、また東北に来る」と言ってくださる方もいます。前にあったようにはならない。復興というよりは「再生」していくという感じです。

   “関わり”は続いていく

写真=七郷同窓会のお茶っこでは、ボランティアの伴奏に合わせて歌う

写真=石巻では「いしのまきっこ広場」を開催した

 ー関わる中で印象的だったことは何ですか。

 小川 「何もかもが無くなる」ということを、体験していない私たちは本当の意味で実感はできないのだと思わされました。ある時親しくしている被災者の方から「全部をなくしたことがない人には(この気持ちは)わからない!」と言われてハッとしました。

 もう一つは、被災した人々の思いは一人ひとり違うということ。津波を見た人、見なかった人がいる。避難所での待遇でも比較的良かったところと悪かったところがある。目の前の人がどういう経験をしたのかを、しっかり聴きながら接することが大事だと思いました。

 ー大変だったことはなんですか。

 小川 スタッフの調整です。初期のころは、休むことも考えず、とりあえず目の前のことをなんとかしないといけない。スタッフの休暇、給料、社会保険などの待遇は後から整備されました。組織はどういうものか、会計は何か、まったく未経験な人たちが手さぐりでやってきました。スタッフ間で支援の考え方が異なり議論になることもありました。解決したこともありますが傷ついたこともありました。多様な人間関係を受け止めていくことは大変です。

 ーうれしかったことはありますか。

 小川 学生のときにワーカーとして参加して、卒業してからスタッフとしてきた人がいる。しかし、やがて仕事をみつけて、それぞれの生活を始めていきます。もう少しいてほしいと思うこともあったが、それぞれの人生がある。エマオでの出会いを通して、考えなかった方向に人生が変わった人、迷っていた仕事を決断した人もいました。スタッフどうしはつながりが濃く、エマオから離れても連絡を取り合ってつながっている人も大勢います。

 ー東北教区の働きとして今後どのようになっていきますか。

 小川 東北教区では、小委員会を設けて、エマオにつながりがあった人などからの問い合わせに対応できるようにします。仙台の教会が宿泊施設になり、信徒の方々が食事作りの世話をしてくださった。今も七郷仮設の同窓会での食事づくりや、一人暮らしの方の訪問で協力していただいています。震災を通じてつながりができ、関心を持ってもらいました。

 ーエマオといえば、「祈り」と「スローワーク」を大事にしています

 小川 かつてのスタッフたちに8年を振り返ってもらったが、その中で「スローワーク」をこれからも大事にしていこうという声がありました。大きい成果を出すことも必要なことですが、それだけではない、出会いの大切さをゆっくりお互い味わっていくことも大事です。被災地の方々と年賀状や手紙のやりとりを続ける元スタッフもいます。本人はなかなか来られなくても、覚えていることを発信し続ける。これもスローワークの精神だと思います。私は仙台にいるので、仙台や石巻の被災者に、これからも折々に会いに行こうと思います。ほかのスタッフもそのように思っているようです。また、今後、仙台を離れることがあっても、先輩スタッフの例にならって折々に挨拶をしてつながっていたいと思います。

 本当にたくさんの方々が直接関わってくださり、来られない方でも献金を捧げてくださった。全国の教会、キリスト教学校も支援のためのバザーなどを開いていただいた。多くの方々に覚えて祈っていただき、ここまで続いてきたのだと感謝をお伝えしたい。東北はまだまだこれから。ぜひまた東北に来て変わっていく東北に関心をもってもらいたい。

 ▽エマオ感謝会(東北教区被災者支援センター委員会主催)3月23日午後2時〜4時30分。仙台市青葉区の東北教区センター3階大会議室で。一部礼拝、二部感謝会(茶話会)。TEL022・265・0173