【書評】CS現場が知りたい「実践的な知恵」惜しみなく 『信仰をはぐくむ教会学校』評・太田真実子

 「うちの教会学校にも、まつけん先生のような人がいてくれたら」。そう思わされるほど、著者・松尾献先生は、若くして豊かな経験を持ち、ユーモアとカリスマ性にあふれた人物。けれども本書を読み進めると、その魅力は天性のものだけではなく、誠実に時間をかけて働きに向き合ってこられた歩みの中で培われたものだと気づかされます。だからこそ、私たち読者もそこから多くを学ぶことができます。


 まず私たちが覚えておきたいこととして、神さまが「イスラエルよ」と呼びかけられたように、子どもたちへの信仰継承は「家庭」に限らず「教会」が共に担っている、ということを本書は教えてくれます。そして、「教会学校の子どもたちにどう関わればよいのか」という問いに、イエスさまが人となられたという視点を交えてヒントを与えてくれます。また、教会学校が決して譲ることのできない大切な「アレ」についても、改めて思い起こさせてくれます。


 さらに本書は、現場で直面する具体的な悩みにも寄り添います。「必ず成功する方法」を提示するハウツー本ではありませんが、著者自身の歩みを通して得られた実践的な知恵を惜しみなく分かち合ってくれます。家庭への励まし、教会学校のあり方、説教の届け方、分級の進め方、洗礼後のフォローアップなど――いずれも現場に立つ読者にとって、まさに知りたいことばかりです。「悩んでいるのは自分だけではないのだ」と視野が広げられ、その一つひとつの知恵が、自分たちの課題を見つめ直し、「信仰をはぐくむ教会学校」の成長へと踏み出していく力となっていきます。


 筆者自身も「教会学校のことで悩んでいるからこそ助けがほしい」との思いで本書を開きました。しかし、ページをめくる手には、「自分はまつけん先生のように、イエスさまの素晴らしさを子どもたちに伝えてこられなかった」という不甲斐なさや悔しさ、申し訳なさも混じっていました。教会学校の教師として、また親として、同じような後悔を抱いている方は決して少なくないはずです。けれども本書は、その痛みを抱える読者に対しても、読み終えるときには「自分が為(な)してきたことの結果」ではなく「終末に与えられた希望の約束」へと心を向けさせてくれます。


 教会学校の働きを担っている方はもちろん、子どもたちに関わるすべての人にとって、本書は「今、自分たちにできることをしていこう」という信仰に立たせてくれる一冊です。
(評・太田真実子=日本メノナイトブレザレン教団石橋キリスト教会副牧師)

『信仰をはぐくむ教会学校』松尾 献著、地引網出版、1,320円税込、四六判

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