
前回
今年7月、北米を訪問した。私は7年ぶり、妻は25年ぶりであった。物価が高かった。イチローがプレーした野球場でピザとミネラルウォーターを買ったら30ドル(約4千500円)した。在米日本人や日系人に出会ったが、「はた迷惑なアメリカ」(留学生を追い出す、関税を人質に様々なディールをする、嘘を真実であるかのように主張するなど)の話はなかなかしてくれなかった。政治の話も稀(まれ)であった。言いたそうだけど、議論を避けるために語ろうとはしないのだろう。分断されている、と感じた。
だからといってはなんだが、アメリカに関する本の話をしよう、と考え、渡辺由佳里のエッセイ集を選んだ。彼女はアメリカ人と結婚して、30年近くボストン近郊に住んでいるエッセイストである。年間に200冊以上の洋書を読み、『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』などの著書でそれらを紹介している。本書は、2015年から7年間にわたってのオンラインマガジンでの連載をまとめものである。
1990年代に10年、北米に留学していた頃の記憶がよみがえった。
