【3人に聞く】④ 「解散命令」と信仰 旧統一協会からの脱会者のケア 

小岩 裕一(日本イエス・キリスト教団西宮聖愛教会牧師)

2025年5月現在、団体の解散命令の手続きが進んでいます。旧統一協会問題とは、社会的には霊感商法による甚大な被害(※1)です。キリスト教会は、印刷物に「旧統一協会とは関係ありません。この問題で困った方はご相談ください」と記載するなどしています。

 

1、旧統一協会信者の理解

 ⑴聖書から逸脱した教理
聖書を使用していますが、『原理講論』によって文鮮明を再臨のメシアとする教理です。霊感商法を行うのは「万物復帰」の教理があるからです。分派も派生し、教理も変化して混乱していますが、基本的には『原理講論』と統一協会の歴史の概略の理解は必要です(※2)。旧統一協会こそが正統であり、必ず「地上天国」が実現すると確信しています。『原理講論』の間違いに気づき、主イエス・キリストが神であり、十字架の贖いが完全であり、再臨主は主イエス・キリストご自身であると理解すると、自分から脱会することになります。

⑵マインドコントロールの心理
脱会者は異口同音に「気がついたらカルトにいた」と言います。誰でも異端やカルトに入る危険はあるのです。内部では、教祖の指示だけが正しく、社会から誹謗(ひぼう)中傷を受け、迫害されていると言います。都合の悪い情報は隠し、外向けの派手なイベントを宣伝します。疑問が生じても、考えることは罪と言われ、思考停止になり、強制的に活動させられます(※3)。

⑶閉鎖された集団
彼らは集団生活をし、霊感商法、珍味売り、街頭アンケートに全時間を費やしていました。昨今、合同結婚による「二世問題」が表面化しました(※4)。一般社会の仕事や友人を失い、家族とも絶縁されてしまい、脱会したくてもできない人たちが多いのです。脱会後も社会生活が困難になります。

 

2、脱会者のケアの準備

 

⑴相談者の見極め
キリスト教会を攻撃する人、偽ってキリスト教会や超教派団体に入り込もうとする人には警戒しなければなりません。しかし、迷っている人、できれば脱会しようと思っている人には、援助の手を差し伸べることができればと思います。最初から教理批判するのではなく、彼らの苦悩を聞いて一緒に考えることから始めることです。脱会しようとする人たちの心の混乱、葛藤、揺り戻しは、一人では負いきれないのです。

 ⑵長期間のケア
現実、脱会するためには、あまりにも多くの課題があります。「薄皮を一枚一枚剥(は)がす」ように、、、、、、

2025年05月11・18日号 06面掲載記事)