
懇親会で。ウクライナ料理ボルシチの材料となるビーツ(赤カブ)が自由学園内で栽培されており、代表の生徒たちからソロツカ一家(後列右4人)に手渡しされた。前列右2人目が渡部さん、後列左端が更科さん
「ウクライナのために何かできないか」。中高生たちが応答した。東京・東久留米市の自由学園では、3月と5月、生徒たちが自主的に駅前募金活動を実施した。
リーダーの渡部小暖(こはる)さん(中等科2年)は、「いろんな映像を見て、同じ人間が、別の人間を無差別に殺す状況が信じられなかった。命の重さが違っていいのか。募金で少しでも状況が良くなれば」と話した。
同学園では、平和・人権・環境を考える授業などを重視し、生徒たちも自主的に活動を展開してきた。生徒たちの活動を教師も支え、「『当事者のリアルな声』に触れる機会を提供したい」と、同学園中等科・高等科の男子部女子部全生徒を対象に、「ウクライナに想いを寄せるトークイベント」を6月11日に開いた。
ゲストはテチャーナ・ソロツカさんとその家族。一家は2000年に来日した。テチャーナさんはウクライナの伝統工芸品「ピサンキ」づくりの講習会などを開いている。親戚はキーウ在住だ。
イベントでは娘のイリーナさん、バレリアさんがウクライナの伝統や、ソ連体制下の窮乏、ソ連崩壊後のロシアの脅威、今回の戦争の被害状況などを解説した。「ロシアは、ウクライナの文化、言語、名前までも消そうとしている。ウクライナが戦いをやめることは、ウクライナの存在が消えることを意味する」と危機感を訴えた。
生徒からはウクライナの文化や支援方法について質問があった。「軍事支援にならないか」という率直な問いについても、テチャーナさんは「日本の各支援団体は法律に基づいて人道支援に用いている」と説明した。
集会後に懇談会が開かれ、ソロツカ一家はロシアとの関係、虚偽情報への警戒を語るとともに、「料理や音楽など身近なところからウクライナに親しんでほしい」と勧めた。
集会を準備した更科幸一さん(自由学園副学園長・女子部校長)は集会最後に「他人事ではなく自分事にできるように」と祈った。「遠い国のことを自分事にするのは難しい。しかしこのような経験をする若い人が増えれば、社会も変わるはず」と期待する。渡部さんは「日本人に必要なのは想像力。自分の国が焼け野原になったと想像したら、何をしてほしいかが、分かると思う」と語った。
【高橋良知】
