5月19日号1面:『被造物ケアの福音』著者ブックレス氏が講演 人間/生態系中心こえた〝責任〟

「被造物ケア」によって、福音理解、弟子訓練、教会生活、宣教全体を包括的にとらえ、実践とつなげる視点が示された。『被造物ケアの福音-創世記から黙示録のエコロジー』(いのちのことば社)の出版記念講演会が4月22日、東京・世田谷区の同盟基督・世田谷中央教会を会場に開かれた。第6回聖書的環境シンポジウムとして、聖書的環境コンソーシアム、いのちのことば社共催で開催。

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同コンソーシアムは2016年の第6回日本伝道会議をきっかけに設立された。同メンバーは17年にローザンヌ運動の被造物ケアのカンファレンスに参加。『聖書とエコロジー』著者のリチャード・ボウカム氏に加え、今回の著者デイブ・ブックレス氏=写真=にも会った。ブックレス氏は「ローザンヌ運動」の被造物ケア・ネットワークの共同代表、国際環境ネットワーク「ア・ロシャ」神学ディレクターだ。

同書の前半五章は、創造から再創造までの五幕(創造、堕落、土地、イエス、新しい創造)という聖書の全体像から解説、後半四章は実践編として弟子訓練、礼拝、ライフスタイル、大宣教命令の実際例とともに語る。

訳者の石原謙治氏は「本書は、なぜクリスチャンが環境問題に取り組むのか、どのようにして取り組むのか、を聖書理解から解説し、自身の牧師、環境活動家としての経験と家族と一緒に歩んだ旅路から語る」と勧めた。

「ア・ロシャ」国際代表理事で、福島第一原発事故以降、日本ともかかわりがあるスワン・パーク氏が来日して挨拶。「韓国で同書が翻訳され、被造物ケアの取り組みが広がった。自然を重視する日本文化にも合うと思う」と期待した。

オンラインで登壇したブックレス氏は「『人間中心』『生態系中心』の自然観があるが、第三の視点として、『神中心』が必要」と強調した。「『人間中心』は人間上位のヒエラルキーの中で、自然破壊をもたらした。『生態系中心』からは、人間をウイルスとみる極端な視点も生まれた。しかし『神中心』は、人間が被造物全体の一番下に位置して、被造物全体への責任を担うイメージだ」と話した。

ローザンヌ運動の「ケープタウン決意表明」(2011年)で被造物ケアは「福音の問題であり、キリストの支配権の範囲内にある」と明記されたことに触れ、福音派の宣教観の変遷についても述べた。19世紀以前では、福音宣教とともに、農業や植物研究、動物愛護などにも貢献をしていた。しかし進化論、リベラル神学、社会的福音が登場すると、これらに対抗して、魂の救いに特化した宣教が行われた。20世紀後半には、福音派の中で統合的な福音理解、被造物ケアの視点が現れた。

講演後半では、個人、家庭、教会での実践に言及。「一般の環境団体は環境破壊に絶望や恐怖を抱いている。だがクリスチャンはキリストによる被造物の再生の約束のゆえに、損なわれた世界の中でも、希望をもてる。これは弁明と伝道において重要」と話した。【高橋良知】

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