【参議院選挙後の祈り①】「他者と共に生きる勇気を教えてください」児玉智継 JEA社会委員会委員長

大きな政局の変化を迎えた7月20日の参議院選挙。キリスト教会にも影響を与えるだろう。「参議院選挙後の祈り」を寄稿してもらった。


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第27回参議院選挙の結果は、国民の既成政党への失望と新興政党への期待が明らかとなった。総務省によれば、投票率は58.1%だった。前回の参院戦と比べ6.46ポイント上昇している。今回の選挙は物価高対策など、生活に直結する政策が争点となったこともあり、政治への関心が高まったのだろう。その意味でも、新興政党の躍進には大きな意味があったと思われる。

一方で、その躍進の背景には、自国第一主義的なスローガン、あるいは排外主義的な主張への共鳴があったということは注意すべき点であると思う。排他的ナショナリズムは差別や分断を生み出し、全体主義運動という暴力装置を発動させる危険性を多分に有している。

政治哲学者であるハンナ・アーレントは、『全体主義の起源』の中で、全体主義を動かしたのは「大衆(mass)」であった、と言う。アーレントによれば、「大衆」とは「共通の利害で結ばれてはいないし、特定の達成可能な有限の目標を設定する固有の階級意識を全く持たない」人々であり、「まったく政党には参加せず選挙にもほとんど行かない中立で無関心な多数の人々」である。そしてアーレントは、絶望とルサンチマンに満ちた大衆が求めたのは、分かりやすくて安心することができる世界観であった、と考察している。

 今回の選挙を読み解くひとつの鍵は、この「分かりやすさ」である。しかし、その分かりやすさは、必ずしも事実とは一致していなかった。

我々は「ポスト真実(post-truth)」が常態化した世界に生きていると言えるかもしれない。ポスト真実とは、「世論を形成するうえで、客観的な事実よりも、感情や個人的な信念に訴えるものが影響力を持つ」ことを意味する。ポスト真実の時代には、「大衆迎合主義(populism)」が蔓延する。

「偽りの霊」(Ⅰヨハネ4:1)がうごめいている。政治的な戦いであると同時に、霊的な戦いでもある。「私たちの格闘は血肉に対するものではなく、支配、力、この暗闇の世界の支配者たち、また天上にいるもろもろの悪霊に対するものです」(エペソ6:12)。

我々は、国家が両義的なものであるということをよく理解し、その国家の要求の中にある善と悪とを正しく見極める「批判的な力」を身につけ、冷静に判断していかなければならない。我々は国家に対して鋭い批判者であり続けなければならない。それが、地の塩・世の光としてのキリスト者の使命である。

最後に、この6月に採択された日本福音同盟(JEA)の「戦後80年にあたってのJEA声明」の祈りの一節を引用したい。「自己中心の罪に気がつかせ、他者と共に生きる勇気を教えてください。『神のしもべ』である為政者たちのために祈り続ける忍耐力を与えてください」。

児玉智継(日本福音同盟[JEA]社会委員会委員長、JECA・布佐キリスト教会牧師)

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