アルファ世代

長谷川さんと中村さん 2010年代後半以降に生まれた「アルファ世代」が、今後様々な分野で活躍することが予想される。日本ローザンヌ委員会（バックホルツ美穂委員長）は、毎年夏に開催してきた「ローザンヌ・ビジョン・フロンティア」（LVF）で、「アルファ世代と考える宣教の未来シリーズ」を企画した。その第１回が8月18、19日にオンラインで開催された。アルファ世代のディアスポラ（国をこえて移動する人たち）やAI（人工知能）利用について事例を共有し、ディスカッションした。例年8月に開催してきたLVFだが、今期は、11月、来年2月にも開催し、議論の適用、実践を深めていく。8月は長谷川与志充さん（東京JCF協力牧師、三浦綾子読書会顧問）、中村恵久（CALM代表、FaithTech東京シティ・リーダー）が報告した。 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-uzpxe7lgcex85rfd/ 在日外国人の中では、中国人に次いでベトナム人が多い。教会コミュニティーも拡大しており、特に10～30代の若者が多い。その教会形成には多言語のクリスチャンがかかわっていた。LVF初日は、在日ベトナム人への伝道を重荷としているVBTJ（Vietnamese Bible To Japan）代表の長谷川与志充さんが語った。「日本在住者（日本人含む）の200人に1人がベトナム人。特に技能実習生は外国人の中で最も多い」と統計を紹介した・・・ （次ぺージで、ベトナム人教会の展開と課題、AI時代の教会コミュニティーの在り方、など、約2600字） 日本伝道会議で呼びかけ、新しい礼拝場所が 多世代の展開へ VBTJは2018年、ベトナム在住の大塩英人さん（会計事務所経営）が設立した。日本の教会からベトナム人について相談があり、すでにベトナム語訳されていた聖書、三浦綾子著『光あるうちに』『旧約聖書入門』を日本の教会に配布する計画をすると、140教会以上から連絡があった。海外展開もしていた三浦綾子読書会のつながりから、長谷川さんがVBTJに協力し、24年から現職となった。 19年には東京アガペーキリスト教会を設立。現在宮城県在住のベトナム人牧師トラン・ニーさんが協力する。当初礼拝場所としては、中国語礼拝をしている東京・荒川区の東京日暮里国際教会の会堂を月1回借りた。コロナ禍が収まってから、人数も増え、さらに礼拝場所を求めていた。23年の第七回日本伝道会議で、信徒リーダーがパネリストになりアピールすると、救世軍が応答した。現在東京・江東区の江東小隊で月2回礼拝をする。今後は専用の礼拝堂を求めている。 19年にトラン牧師は、名古屋でもベトナム語礼拝を開拓した。日本アライアンス教団・名古屋キリスト教会で毎週午後礼拝をしている。大阪では、在日大韓平野教会が、韓国人向けの若者集会を企画したところ、多くのベトナム人が集まり、ベトナム語礼拝に発展した。24年には、東京、名古屋、大阪の３教会合同のイベントを実施した。茨城県など他地域でも礼拝が始まるという。長谷川さんは「ベトナムで信仰をもったクリスチャン2世の人たちが、しっかりした信仰を持っている」と話す。長谷川さん自身の希望を込めた展望として、①教会内活動のさらなる充実、②メンバーの子どもや日本の若者向けの日本語集会、③全国への開拓、④日本や諸外国語教会との交わり、⑤ベトナムや海外への展開、などを挙げた。 この報告への応答として、増田成遂（なりつぐ）さん（AOG・シティビジョン・グローリーチャーチ牧師）が立った。研究者の聖書のセルグループを形成しており、海外出身者が多いという。「ぜひ外国語集会におつなぎしたい」と述べた。 同教会では、40代やその子ども世代に当たるアルファ世代が少ないという課題を抱えてきた。「何人か導いても、なかなかコミュニティー形成まではいかない。なんとか健康的なクリスチャンホームを築きたい。若い世代に様々な領域を任せていきたい」と話す。いわゆる求道者だけではなく、地域のコミュニティーのニーズに応える子ども食堂などの取り組みも紹介した。 教会に「集中型」と「ネットワーク型」を 2日目は、「アルファAI」というテーマで、クリスチャンITネットワークCALM代表、FaithTech東京シティ・リーダーの中村恵久さんが事例紹介した。 まず牧師の高齢化、教会の小規模化、後継者不足などが深刻化するとされる、いわゆる「2030年問題」を概観した。「教会があっても地域に認知されない。信徒の平均年齢も上がっている。全国に約8000教会があるが小さい教会が多い。背景として戦後の宣教団体ごとの独立開拓や、『地域に小さな教会があること自体が証し』と考える宣教文化があった。キリスト教ブームがある時は、多くの教会を維持できたが、今後日本全体の人口も減少してしまう」と危惧する。 従来の一つの場所で集まる「集中型」に加え、オンライン技術を活用した「ネットワーク型」のコミュニティーを提案した。「Ｚ世代（1990年後半～2010年前半生まれ）やアルファ世代は、所属より選択、地域より共感、複数コミュニティーに属することを好む傾向がある。聖書信仰の核を大事にしつつ、教会も柔軟に変化できるのではないか」と勧めた。 CALMをその例の一つとして紹介した。「ITにかかわる若者は、1つの教会の中では少なく、孤立することがあるが、CALMで励まされ、オンラインとリアルを循環させて教会に戻っていく証しがある。CALMは教会に置き換わるものではないが、地域教会を励ます横のネットワークとなる。CALMでは、オンラインのコミュニティーのほか、ワークショップなどで、具体的なサービスづくりなどにも取り組んできた。「祈りの課題はシビア。『あるアプリを開発したが、これで何万人もの人の仕事を奪ってしまうのではないか。これはみこころだろうか』といったものもある。技術者が書くコード一行一行に責任感を持てるよう、祈り励ましている。全国各地に対面でのコミュニティーもつくりたい。言語や居住地にかかわらず、世界のクリスチャンとITで協力して、共同開発などしていきたい」。中村さん自身、国際的なITクリスチャンコミュニティーFaithTechの日本リード・ディレクターを務める。 AIの「闇」に聖霊の光で立ち向かえるように すでに様々な宣教団体などと協力をしてきた。「学生からビッグテック（巨大IT企業）のメンバーまでいる。仕事や進路の相談もできる。キリスト教会の働きだけでは生活は厳しいが、自分の時間の10％福音にかかわる働きに捧げようと勧めています」 「AIは情報や効率をもたらすが、人の孤独や葛藤に寄り添えない。仕事や役割が失われる時代こそ、居場所＝コミュニティーが不可欠。『2030年問題』は、危機ではなく再生のチャンスだ」と励ました。 応答として、メガバンクで情報処理を担当し、海外勤務もへてきた青木勝さんが立った。 前日の報告も踏まえ、「国際人、国際家族、アルファ世代は、多文化、多言語という意味で重なる。多文化共生の中で、福音とは何か考えたい。技術変革はコピーできるが、心はコピーできない。心を受け継ぎたい」と話した。 情報セキュリティーの脅威も述べた。「核戦争のようにAI戦争が起きることが危惧される。AIは、膨大なデータによるアルゴリズムで動く。便利になるほど、人間には見えない『ブラックボックス』が増える。そこはサタンに付け込まれうる『闇』でもある。闇は予測不可能だが、だからこそ、聖霊が輝く。ルカ24・27、ヨハネ14・26～28、ローマ８・38のような希望が私たちにはある。ローマ12・１～2にあるように、ITの最前線にいるクリスチャンの若者が、聖霊に満たされ、御言葉に立脚し、悪に負けないように、神のみ腕の中で整えられて歩めるように祈らないといけない」と勧めた。 またAI時代において、改めて日本語が注目をあびていると指摘。「語順を変えても通じる日本語は、AIでも分析が不可能と言われていた。いま日本語宣教のルネッサンスだと思う。多文化共生で、単に日本語を使う人が増えているということだけでなく、そもそも、神様が何のために、日本の文化、言語が与えられたのか考えたい。日本人の察する心、言語を用いない心のケアなどに、日本語宣教の真骨頂がある」と語った。 LVF第二回は、11月21日に開催予定。 関連記事 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-uzpxe7lgcex85rfd/ https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-pAKghxi79ybXdjmT/ https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-kPMWvN208esBwzGd/

アルファ世代

「AI世界から見た日本宣教の次世代アプローチ」阿見高洋・フランシス夫妻　ローザンヌビジョンフロンティア第二回

アルファ世代の教会はどうなる？　多言語とAIに向き合う　連続集会で

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