スポーツ – ページ 101 – クリスチャン新聞

＜感激の祈り、出会い＞＜野沢 オリンピック伝道 教会に新風＞＜エルサルバドルの青年 独りで一ヶ月＞＜玄関前で祈り続けた＞ 長野冬季オリンピックでバイアスロン競技の会場に選ばれた長野県の野沢温泉村。この村で唯一の教会が、「野沢温泉キリスト教会」。無牧になりながらも五人の老婦人がひっそりと集会を持ちつづけてきたこの教会に、オリンピック期間中、教会を助けて伝道しようという青年たちが日本全国から集まり、トラクト配布や戸別訪問などを行った。およそ二年ぶりに正餐式も持たれた。 オリンピックの熱気でむせ返るような長野市内から交通機関を乗り継いで二時間あまり。上信越高原国立公園のなかにあり豊かな自然に包まれた野沢は、温泉と野沢菜で知られる小さな山里。村民は四千七百人ほどで、積雪一メートルの日が年間七十日を超す豪雪地帯でもある。村で唯一のキリスト教会として一歩いっぽ着実な歩みをつづけていた野沢温泉キリスト教会が無牧になったのは、当時八十五歳の増田しのゑ牧師が病気に倒れた八年前から。 それまでは教会学校なども開いて活発に活動していたが、次第に信徒も減り、今では五人の老婦人が集うばかりになった。 八十歳を越える女性たち。古くから野沢に住み、十代で信仰を持ったという人もいる。旅館のおかみや、みやげ屋、まんじゅう屋など、その職業もいかにも野沢らしい。 「スキー客が礼拝にくることもあります。けど、冬には教会の屋根の雪かきをするばかり。ひっそりと礼拝してきた教会です」。そう話すのは、長老の島田まさいさん（85）。週に一回、日曜日に五人で集まっては、聖書を読み、祈り合い、賛美する。四十分ほどの短い礼拝だが、野沢菜を囲むその後の食事会とあわせて、信仰の友と祈りを分かち合う貴重な時間。長年、生活の中心になってきた。 牧師の派遣を教団に熱望し、九六年九月から埼玉県に住む丸山豊伝道師（キリスト伝道会・活水の群・篭原キリスト教会）が月に一度、片道三時間車を走らせてメッセージに来てくれるようになった。五人にとってはメッセージを聞ける唯一の機会だ。 そんな教会が二月十五日の日曜日、日本全国から集まった信徒や牧師二十四人で埋まった。普段は座布団に座って聞くメッセージ。たたみ敷きの礼拝堂にいすを並べると、入りきらないほどの人数だった。 大学生や女子高生、薬剤師、主婦、カメラマン志望の学生などいろいろな立場のクリスチャンが、東京や神奈川、姫路、大阪、そして遠く徳島からやって来た。キリスト伝道会「活水の群」の坊向輝国牧師（山手教会）らが呼びかけた。 二月十三日から十七日までの五日間、バイアスロンのコースわきで路傍伝道をしトラクトを配り、村の一戸ずつを訪問してまわった。沖縄出身の青年は、一面の雪景色のなかで故郷の蛇皮線をたくみに弾いて賛美を盛り上げた。 それらの伝道の実りもあった。京都からオリンピックのボランティアに来ていた女性が救われたほか、訪問でも成果があり、「継続して訪問してほしい」と三人の人の住所がスタッフから丸山伝道師に託された。そのうち一人は、スタッフの伝道で悔い改めの祈りにまで導かれたという。 「こんな所まで来てくれるなんてほんとにありがたいことです」と話していたおばあちゃんたち。丸山牧師は、「埼玉であっても野沢であっても、教会で待っているのではなく一軒いっけん訪問して友人になることから始める大切さを改めて感じました。（信じる人が一度に増えなくても）福音をとにかく宣べ伝えていくことが大切なのですから」と話していた。 写真説明： 普段は五人のおばあちゃんが座布団に座って礼拝する場所に、あふれんばかりの人が集まった。中央に三人立っているのは、エルサルバドルから野沢に移り住んでいたクリスチャン親子（左の二人）と二人を紹介する五人のおばあちゃんの一人（右） 各地から野沢温泉に集結したクリスチャンたちが、バイアスロンの競技会場のそばで伝道文書を配るなどの奉仕をした 野沢福音キリスト教会のために祈りつづけていたアルド・健太郎・藤原さん。日本とエルサルバドルのハーフだ 期間中、集まったクリスチャンたちを驚かせた出来事があった。 礼拝に、エルサルバドルの母子が出席してくれたのだ。聞けば、十八年前から野沢温泉で暮らしているが、カトリックの信徒だったため野沢温泉キリスト教会は初めて。母国にしばらく帰国していたときに現地の大学生アルド・健太郎・藤原さん（20）の影響でプロテスタントに改宗、今回はアルドさんが来日して母子の家に滞在していることもあって足を運んだのだという。そのアルドさんは日本とエルサドバドルのハーフで、特に日本に重荷を持って宣教旅行で来日中の青年。野沢に母子を訪ねるとすぐに教会の所在地を調べ訪ねてみたが、週に数時間の集会に行き当たらず、「この教会は閉鎖されている」と思った。以来一が月、毎日のように教会の玄関の前に立って祈っていたという。 「神様、この教会を福音が宣べ伝えられる場所にしてください。多くのクリスチャンを送ってください」 そして迎えた日曜日、玄関先で祈るために教会に行ってみると部屋に人の気配がする。ガラガラと扉を開くと、足元にたくさんの靴がある。 「祈りが聞かれたと感激しました。一か月祈っていたんですから。それもこんなにたくさんのクリスチャンが伝道のために集まった。本当にうれしい」。十八年目にして初めて教会に来た母子を礼拝に誘ったのも、彼だ。礼拝のあと、路傍伝道に人々といっしょに向かうアルドさんは本当にうれしそうだった。 真っ白な雪におおわれた野沢の村と山々。アルドさんは野沢に来て初めて雪を見た。

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オリンピック伝道に感激の祈り、出会い