再稼働

牛山氏 世界全体で、気候危機が平和課題となっている。11月のＣＯＰ27（第27回気候変動枠組条約締約国会議）では、ぜい弱な途上国の窮状が明るみになった。紛争、エネルギー危機はこれに拍車をかける。第五回聖書的環境シンポジウム（聖書的環境コンソーシアム主催）が11月12日にオンラインで開催され、風力発電の第一人者牛山泉氏（足利大学前理事長・名誉教授）が「平和を作り出す自然エネルギー」と題して語った。【高橋良知】 日本は化石燃料の利用、原発推進と様々なせめぎあいがあるが、牛山氏は「日本は自然に恵まれていて、自然エネルギーで電力需要を100％確保できる」と強調した。 前半では自身の研究の変遷、世界や日本のエネルギーの歴史を振り返った。後半では再生可能エネルギーの現状と今後について話した。 ２０２１年に作成された日本のエネルギー基本計画では、２０３０年までに目ざす電源構成は、再生エネルギーが36～38％の一方、原子力は20～22％とされる。「ドイツでは再生可能エネルギーが80％、デンマークでは100％を目指している。世界的に脱原発が進む中、日本はまだ原発にこだわっている」と指摘した。 デンマークは、内村鑑三が『デンマルクの話』で評価したように、自然エネルギーの利用が進む。「内村は『外に拡がらんとするより、内を開発すべき』と語った。背景には、日清戦争、日露戦争に勝利し、軍事路線に踏み出しつつあった日本に対する警告もあった」と述べた。 環境省の調査結果によれば、日本における再生可能エネルギーのポテンシャルは高く、日本にある原発全体の44倍の発電が可能だと指摘した。化石燃料やウランなど世界に「偏在」し、戦争の原因になる資源のエネルギーではなく、あらゆるところにある自然エネルギーの利用を勧め、「『偏在の争い』から『遍在の平和』へ」と述べた。 このような中、日本でも洋上風力には官民挙げての取り組みが進む。20年には洋上風力発電導入促進官民協議会が発足し、「洋上風力産業ビジョン」をとりまとめた。日本海など、洋上風力を導入しはじめている各地の計画に、牛山氏自身もかかわる。「国際エネルギー機関ＩＥＡによれば、洋上風力だけで、日本の電力需要の９倍をまかなえるポテンシャルがある」と改めて強調した。 自動車が電気自動車になるなど、産業構造が変わる中、洋上風力は技術の受け皿になるとして、日本の産業の将来も描いた。「これからはエネルギー狩猟型文明（化石燃料利用）からエネルギー栽培型文明（自然エネルギー利用）へ転換し、持続可能な社会を目指すべき」と述べた。 参加者との質疑応答の中では風力発電のデメリットとその克服、原子力発電の利権とのせめぎ合い、クリスチャン、教会ができること、などについて話し合った。牛山氏は「個人では、ちょっとのことと思っても全体では大きな省エネとなる。ＳＤＧｓ教育で子どもたちの意識も変わっている」と期待した。

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