北海道聖書学院

北海道聖書学院 学院長中川 昭一 昨年60周年を迎えた北海道聖書学院は、当初より「キリストを知り、教会に、世界に、時代に仕える」をモットーとして神学教育に取り組んできました。聖書信仰に立つ本学院は、まず何よりも神のことばである聖書を原文から正しく読み取る力をつけることに重きを置きます。それを伝えていくために「教会・世界・時代」についても学んでいかなければなりません。ですから座学だけでなく、学校生活や奉仕教会での実践も等しく重要視しています。このスタンスは今日も変わっていません。 （次ページで、変化の時代への応答、神学訓練の在り方など、約1200字） 並行して時代の価値観や思想は変わります。近年は変化の速度が増していることを認めざるを得ないでしょう。「真実は一つではない」をスローガンとするポスト・トゥルースが定着し、一見個々を尊重するような思想でありながら、「自分の正しさを尊重させたい」という風潮を生み、それが今の世界や時代の緊張につながっているのかもしれません。 加えて、高度なデジタル社会に突入し、良くも悪くも〝便利さ〟が加速しています。もちろん、こうした〝道具〟の発達は新しい分野の開拓にも寄与していますが、一方で、親から一人遊びのためにと渡されたタブレット端末を器用に使いこなせる幼児は、友だち作りが苦手になってきているとも言われます。自分の悩み事の相談相手をＡＩにする人たちも増えています。 とりわけコロナ禍の中で、「いかに他者と接触しないで事を進めることができるか」が創意工夫されました。キリスト教界においては〝オンラインによる礼拝〟が急速に進められ、致し方なかった面も認めつつ、その賛否と副作用の議論が続いています。 確かに、他者と関わることはエネルギーを要することです。オンラインで必要最低限の話だけをし、自宅に居ながらにして他者とは関わらず、自分好みの礼拝や説教を視聴することで、ある程度の満足と信仰生活の理由付けをすることもできるでしょう。この時代に感じる〝隔ての壁〟や〝分断〟は、積極的に他者を否定することだけではなく、〝自己充足〟に慣れてしまった「私の領域を壊さないで欲しい」という、消極的な面もあるように感じられます。そして、これからのクリスチャンはこのような世界と時代に、また教会に、福音を届け続けて行かなければならないことを改めて考えさせられます。 神学校ではまず何よりも聖書を学び、キリストのように人々に仕えることを訓練していきますが、〝時代〟ということを考えるとき、現在、そしてこれから献身する人たちは、まさに〝このような時代から出てきた人たち〟だという理解を持たなければならないとも考えさせられています。 「真理」は決して変わらないものであるからこそ、時代の変化と共に伝え方や訓練の仕方も注意が必要でしょう。それは単なる方法論ではなく、教える立場の人がまず〝聖書に聞く〟ことだと考えます。例えば牧会書簡のテモテへの手紙第二２章24～25節では「主のしもべが争ってはいけません。むしろ、すべての人に優しくし、よく教え、よく忍耐し、反対する人たちを柔和に教え導きなさい」と命じられています。教える人自身も欠けだらけで歪みがある存在だからこそ、〝聖書に聞く〟ことから始め、そこで自分が矯正され続ける必要があります。教える人が真理によって、この世界や時代の影響に打ち勝たなければ説得力はないと言えるからです。 そして言うまでもなく、聖書そのものに全世界・全時代に打ち負けない秘訣と力があります。その意味でも〝聖書を読む力〟を重視し、十字架を刻み込む生きた信仰を培うことが、変化する時代の問題に立ち向かえる人を育てる道だと信じます。 札幌市内の校舎

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キリストを知り、時代に仕える者に 北海道聖書学院 学校特集④

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