原発 – ページ 2 – クリスチャン新聞

世界でもっとも火山が密集する日本で、災害リスクをどう考えるか。専門家が地震発生や火山噴火の確率や予測についての誤解を解き、現在解明されている科学的見地から語った。巨大噴火は今後100年の発生確率は１％程度の低頻度災害ではあるが、被害者数と発生確率に基づく評価では、交通事故と同程度のリスクがあるという。 原発体制を問うキリスト者ネットワーク（ＣＮＦＥ）主催の学習講演会「迫り来る巨大地震と巨大噴火！─原発・核燃施設は耐えられるのか─ 」が火山学者の巽好幸氏（神戸大学名誉教授、ジオリブ研究所所長）を講師に、10 月 30 日、東京・新宿区の日本基督教団四谷新生教会で開かれた。 はじめにＤＶＤ 「カタストロフィ」（ストップ・ザ・もんじゅ制作）の上映があった。地震・津波・火山噴火のリスクが説明され、福島第一原発事故の教訓と残る課題を振り返り、核燃料サイクルの問題点が述べられ、火山噴火による青森県の六ヶ所再処理工場事故のＣＧシミュレーション映像が紹介された。火山灰により交通インフラや電気系統も機能しなくなる災害が再現された。 続いて巽氏が講演。最初に地震調査研究推進本部が公開している「地震動予測地図」を表示。「過去30年間の断層地震の発生周期と規模、地盤強度から予測しており、世界的に画期的なもの」としつつ、「未確認の断層はたくさんあり、地震も必ずしも周期性があるものばかりではない」と留保した。さらに「30年間で１％の発生確率でも油断できない。阪神淡路大震災が発生した前日の地震発生確率は１％程度だったが、翌日には地震が起きた。日本はいつでも地震は起きる。そういうものだと認識して暮らしてほしい」と警告した。 今後発生が予測される南海トラフ巨大地震、首都直下地震、東北沖アウターライズ地震の仕組みと被害想定を確認し、「ＤＶＤでも紹介されたが『100回逃げて、100回来なくても101回目も必ず逃げて』（釜石市津波記憶石）」と勧めた。 火山灰による被害について、気象庁が作成した降灰予想の図を紹介した。「10センチ積もれば鉄道、飛行機、ライフラインが止まる。農地の回復は数十年かかる。1センチでも交通障害が起こる」。実際に７千300年前の火山噴火で、南九州の縄文人が絶滅したとされる事例も紹介した。 さらに九州の巨大噴火をシミュレーションした。「２時間で周辺の700万人が瞬殺される。1日目に大阪で50センチ降灰、２日目に関東で20センチ降灰、本州で10センチ降灰し、１億２千万人が生活不能となり、救援活動もほぼ不可能。『日本喪失』となる」と述べた。 司法判断の問題について広島高裁の伊方原発運転停止の仮処分取り消し（２０１８年）の事例を紹介した。九州電力は巨大噴火について、「監視をすることで事前に予知できる」と主張。これに対して、日本火山学会は「現状では予測できない」と声明で発表した。一方原子力規制庁がまとめた原子力発電所の「火山影響評価ガイド」では、巨大噴火が発生する科学的合理的な根拠について、「巨大噴火の可能性が十分に小さい」、「社会通念上容認される水準」とする。 これに対して巽氏は「現状では噴火予測は不可能だ。『巨大噴火が発生しないという科学的合理的な根拠』はあるのか」と批判した。「噴火に周期性があるかどうかは明らかになっていない。火山の下にあるとされるマグマ溜まりの実態についても世界的に解明されていません」 「災害が多い日本では、無常観やあきらめ、刹那的享楽主義がある一方、『復興』などといった高揚感によってリスクが忘れられがち」だと危惧した。「生きている間に起きなかったとして、子孫たちが悲惨な目に遭うかもしれない。超巨大噴火はこれから必ず起こる。仕組みをよく理解して覚悟をもって暮らしてほしい。この試練にどう対処するかが、未来への責任」と勧めた。このようなリスクを考えて巽氏はジオリブ研究所を立ち上げ、啓発活動している。

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