首都圏

小平氏 「災害で心が傷つくことより、人と人との関係性の中で傷つくことのほうが多かった」。阪神淡路大震災の支援と疲労を経験した2人が教会の災害対策を語った。 杉並区（Ｓ）、中野区（Ｎ）、練馬区（Ｎ）にある教会の協力により立ち上がった「ＳＮＮキリスト者防災ネットワーク」（三浦真信世話人代表）は９月５日、「第３回加盟教会交流会」を東京・中野区の日基教団・東中野教会で開催した。テーマは「あの日、何が起きたのか─その瞬間、あなたならどうする？」。小平牧生氏（兄弟団・ニューコミュニティ牧師）、野田沢氏（ＳＣＦキリスト教友愛会総主事）が、自身の体験を発表した。 開会挨拶で三浦氏（単立・久遠キリスト教会牧師）は、「阪神淡路大震災で、ご自身が被災されたこと、被災者でありながらすぐに支援の働きに就かれたことから、体験談を話してもらうことにした」と、二人を発表者に招いた理由を語った。 最初に小平氏がオンラインを通じて発表。「当時、牧師になって10年目。震度７の揺れを経験した地域のいちばん東の端で、阪神高速道路が倒れ、スキーバスが引っかかっている光景が、教会の目の前の風景だった」と振り返る・・・ （次ページで被災体験、教会の対策案など、約2100字） 「その日から、教会は近隣の被災者の方々の避難場所となった。しばらくしてワールド・ビジョン・ジャパン、日本国際飢餓対策機構（現ハンガーゼロ）、日本福音同盟などの現地事務所となり、支援活動が始まっていった」 「しばらくして、ボランティアが国内外から教会に来るようになった。だが、何の準備もなく来るので、生活の世話を私たちがしなければならない。そのような状態が２年ほど経った時に私は燃え尽きてしまい、その後１年半、牧師を休職することになった。疲れたと言うより、壊れたという感じだった」 これらの体験とその後の30年を振り返った上で、小平氏は牧師として考え続けているいくつかのことを振り返った。 第一に、「震災を経験してどう変わったかと尋ねられた」こと。「特に、宣教にどのように生かすことができたか、という質問を、嫌というほど受けてきた。しかし、そのような視点だけでは、教会は何か大切なものを背後に追いやっているのではないか。何らかの意味のある答えを求めようとするあり方への抵抗のようなものを感じている」 第二に、「教会は支える側であるという視点が、大きな妨げとなっていなかったか」。「私たち教会は人々と地域を『支援する』ことを意識したが、支えているより、支えられていることに気づき、やがて互いに支え合う者としての意識を持つようになった。教会は、人を支援する働きよりは、苦しみの真ん中にあって自らも苦しむ者として共に生き続けることに導かれてきた」 第三に、「経験を共有する交わりから、人生の共同体へ」。「復興が進むにつれ格差が出てくる。そうなると、『あの時のことを思い出したくない』と、教会の交わりから離れていく人も出てきた。経験を共有するだけでなく、人生の共同体を生み出していかなければいけない」 第四に、「語り合える時を持つ」。「危機管理には未然防止、起こった時にどうするか、の二つある。震災の場合、未然防止は難しい。起こった時に問われるのは、どう対応するかだ。教会の場合、回復していくだけでなく共に歩んでいくことが大切だと思う。そのことを語り合えるような交わりが必要だ」 その上で、教会が取り組んでいることとして「教会を小さくする」ことを挙げた。「震災が起きると、教会員の4分の３が礼拝に集えなくなった。会堂に集まれなくても、一人ひとりがどこにあっても主を礼拝し、交わりをし、福音を証ししていくためには、それぞれの生活の場において、教会の姿が現されていくよう、取り組んでいくことが必要だ。そのために、教会を小さくしてきた。この形は、コロナ禍でも生かされた」 その他、「災害時、地域ごとにライングループを使って、一斉にそれぞれの安否ができるよう、練習している」、「会堂を、地域の他教会、行政、住民の拠点とする」、「教会員には、たまには近くの教会に顔を出してください、と言っている。そうすることで信徒レベルでのネットワークを広げるために」と、取り組みを紹介した。 野田氏 野田氏は、学生の時に震災を経験。3日間避難所で避難した後、全壊した家に戻り、そこで数か月過ごした。しばらくして支援団体が入り、支援活動の立ち上げに関わった。「当時は、立ち上げに関われるなんてすばらしいと無邪気だった」 その16年後、東日本大震災の支援に関わったが、その時に阪神淡路大震災の時のトラウマ（PTSD）に気づかされた。「死、血、声、揺れが怖かった。それが『もっと関わらなければ』という強迫観念になった。災害から来るストレスが、日常に覆われていた傷を露わにした」 ただし、「災害で心が傷つくことより、人と人との関係性の中で傷つくことのほうが多かった」と振り返る。「支援者の中には、そこで傷つき、去っていく人もいた。牧師の異動も多かった。理由は様々だ。例えば、牧師の一存で教会堂に被災者を受け入れた。だが、信徒からは『教会は主の宮、礼拝の場なのに、なぜ生活の場にしてしまうのか』と言われた。こうして、教会員との間に軋轢（あつれき）が生じてしまう。教会に被災者を受け入れたいが、役員会を通していないし、自分の一存では決められない牧師もいた。また、被災地では、被災者側からは支援者の取り合い、団体側からは被災者・支援場所の取り合いということも起きた」 これらの経験から、「ストレスと正義が交わった時、非常に危うい」と指摘する。「能力、犠牲心、真面目さ、正義、愛にストレスが加わる時、『裁き』に変質することがある。それらに吞まれないために、日頃から話し合うこと、教会内で災害時の教会と牧師の判断や対応を決めておくこと。少なくとも話し合っておくことが大切だ」と強調した。 発表の後、小平氏と野田氏の対談、各グループに分かれてグループディスカッションの時を持った。各グループからは、「防災グッズをそろえる以外の備えについてあまり考えてこなかった。平時に教会での人間関係を築いておかないと、非常時に対応できないと思った」、「多くのクリスチャンは自分の教会という意識が強くて、地域社会のことを考えている人はほとんどいない。教会として難しければ、一人一人が地域社会に何ができるか考えておくことも大切では」、「遠方から電車で教会に通う人も多い。お互いの教会を知るという意味で、自分の家からいちばん近いSNNに所属する教会に、年に一度、行ってみたらどうか」などの声が聞かれた。 関連記事 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-6g2ymnrbhvxvqadt/ https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-zqNC7GysiwhXJa6n/ https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-ehtw2wnr4jazzbsg/ https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-kghr5z6nebyv8czt/

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