高市早苗

碓井真史（新潟青陵大学大学院教授/心理学者） 《連載》世の目 人の目 聖書の目 日本初の女性総理誕生。自民党総裁に選出されてから、連立の組みなおしを経て、大報道の中で日本の新リーダーが決まりました。「ワークライフバランスという言葉を捨てます」「働いて働いて働きます」というスピーチも賛否両論を巻き起こしました。 心理学的には、強さと自己犠牲を示すリーダーの言葉は効果的です。ワ ークライフバランスに関しては、時間を割り振る「バランス」の考え方自体が間違っている、ワークとライフが一つになった「統合」こそが必要だとも言われています。 さて話は変わって、子どもたちのヒーロー「アンパンマン」・・・（次ページで、自己犠牲やワークライフバランスについて） さて話は変わって、子どもたちのヒーロー「アンパンマン」。今年は作者のやなせたかし夫妻がＮＨＫ朝ドラの主人公にもなって、話題となりました。「アンパンマンは世界最弱のヒーロー」と作者は語ります。空を飛ぶことぐらいしかできず、困っている人を助ける方法は「ぼくの顔をお食べよ」です。顔がぬれたり汚れたりしただけでも、力が落ちてしまいます。無敵のヒーローが圧倒的な力で悪を倒す。そんな正義の味方を作者は否定したのでしょう。 主題歌「アンパンマンのマーチ」にある「何のために生まれて何をして生きるのか」。その問いに対する答えとして作者が作った映画があります。「いのちの星のドーリィ」。捨てられたお人形のドーリィを、アンパンマンが助け出します。すると「いのちの星」が宿り、お人形は動けるようになりました。彼女は大喜びで、好き勝手に生き始めます。ところが、みんなに嫌われるうちにいのちの星がしぼみ始め、とても不安になるのですが、誰にも相談できません。アンパンマンは、人助けをした時に温かい心になって生きる意味を知った、と語るのですが、彼女は聞こうとはしません。 そんなとき、バイキンマンが攻撃してきます。アンパンマンは身を挺（てい）してドーリィを守ることしかできず、ついに負けてしまいます。いつもなら元気になれるはずの新しい顔も受け付けません。アンパンマンは死んだのです。そこで初めて、ドーリィは自分の生きる意味を問い直し、自分のいのちの星をアンパンマンに捧げ復活させる、という物語です。 素晴らしい言葉だけでは心が動かなかったのに、愛と自己犠牲が彼女の心を動かし救いに至らせました（物語はハッピーエンド）。そしてアンパンマンの働きは、仕事のつらい義務感でも高慢な虚栄心でもなく、生活と統合された、生きることそのものだ ったのでしょう。 アンパンマンを超人的ではなく弱く設定したのは、もう一つ理由があると思います。アンパンマンは、私たちとかけ離れた存在ではないのです。「アンパンマンたいそう」の歌詞にあります。「アンパンマンは君さ 勇気を出して」 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-yonome43/

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