生き方としての「本屋」　「本屋」の存在意義④

前回 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-e2w9qfm5pe1ygkp8/ 個性豊かな40の本屋が集った「二子玉川 本屋博」は、東急・二子玉川駅出てすぐの屋根付きの半屋外広場ガレリアで１月31日、２月１日に開催された。２日間で３万人以上が来場した。 駅を出ると、本棚をうずたかく重ねたオブジェと、本を満載にした２台の本屋バス（BOOK TRUCKとVALUE BOOKS）が迎えた。その向こう側には、各本屋のブース。絵本や海外の本に強い店、猫や花など特定のテーマに特化した店などバラエティーに富む。売り方も様々だ。キーワードだけを本のカバーに書いたもの、好きな香りを選び、そのイメージに合った本を提供する、などゲーム的な趣向も凝らされていた。店員と語り合うお客たちの様子も印象的だ。食べ物屋台、印刷や紙のワークショップ、音楽やトークのライブもあった。 （次ページで出版、取次、書店の思いなど） 本屋博実行委員長の北田博充さんは、本屋博会場そばの二子玉川蔦屋家電の書店員であると同時に、自身でひとり出版社、書肆汽水域（しょしきすいいき）を運営している。蔦屋家電は、本、家電、カフェなどを組み合わせたライフスタイルショップ。二子玉川店の書店部門には、北田さんを含む独立指向の高い「本のコンシェルジェ」たちが本をセレクトしている。 本屋博の出品者たちは、学生時代からアルバイトで書店員をしていた人もいれば他業種から転職、起業して始める人もいる。「高度成長期や、バブル期以降に育った人たちは、今までの本屋の在り方にとらわれず、自分なりの視点で本屋を捉えている、と言われている」と実行委員は話した。 『これからの本屋』（北田博充著、書肆汽水域、２０１６） 本屋博の出店者のいくつかについては『街灯りとしての本屋 11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』（田中佳祐著、竹田信弥構成、雷鳥社、２０１９）でも詳しい 『これからの本屋』（書肆汽水域、２０１６）で、北田さんと対談した、本屋博の出店者でもある高橋和也さん（SUNNY BOY BOOKS）は、「本屋って、『生き方』だと思う」と述べていた。ここには本を売る、買う以上の様々な関係性が見えてくる。本屋が新しいライフスタイルの一つとなっていると言えるだろう。 本屋博初日のトークイベントでは、30代前後の元取次社員らが語り合った。古賀詩穂子さん、碇雪恵さんは、それぞれ漠然とした出版、本屋への関心から取次に就職したが、「だんだんと独立への思いが芽生えた」と振り返った。 古賀さんは、書店開業をめざし、東京・神楽坂の書店「かもめブックス」で働きながら様々な活動を展開。現在は本屋好きでない人に向けたフリーマガジン「読点magazine、」を制作し、様々な場所で配布している。 碇さんは、取次を通さない、直取引を推進する出版社トランスビューに関心をもち、同社が実施する「封入大会」に参加した。「膨大な数の書籍を『情報』としてみてきた取次の働きと違い、一冊一冊の本と向き合うことの面白さを知った」と話す。退職後はウェブサイト「WEBmagazine温度」運営を通して書籍を紹介する取り組みを進める。 松井祐輔さんは、書店開業を目指して取次に就職。退職後、東京・下北沢にある本屋Ｂ＆Ｂ（numabooks）に就職。イベント、飲食、独自の選書で知られる先駆的な書店だ。取次を介さない書籍も取り扱っており、「取次で多くの本を見てきたと思っていたが、知らない本が多かった」と驚いた。numabooksに勤めつつ、独自で週末に開業する書店H.A.Bookstore（東京・蔵前）を開業。販売代行、企画出版まで担う。流通に関しては「取次を通す本をつくりたい」と取次を重視する。北田さん自身も書店開業を志して、取次に勤めていた経緯がある。 それぞれ「大きな流通の流れではなく、小さな取引に適性があった」と述べる一方で、「取次を離れて、毎日しっかり物流がされている取次の大事さを知った」とも語った。 「書店の側で本を探す選択肢が増えるといい」としめくくった。これは前回、ライターの永江朗さんや木村元彦さんが語っていたことに通じる。 ４月以降、コロナウイルス感染拡大にともない、休業を余儀なくされている書店も多い。本屋博ではネットワークを生かして、ＳＮＳ上で、ハッシュタグ「♯オンライン本屋博」をつけて各本屋に様々な書籍や取り組みを紹介してもらう工夫をしている。次回も本屋博とセレクト書店について見ていく。（つづく）【高橋良知】 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-bjpt54821kbkzpzf/

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