
6月は「環境月間」。企業活動でも環境配慮が見直されるように、世界の教会では、「被造物ケア」を視野に入れたビジネス宣教が注目されている。
ローザンヌ/世界福音同盟被造物ケアネットワーク(LWCCN)は、ローザンヌBAM(宣教としてのビジネス)ネットワーク、ロンドン現代キリスト教研究所(LICC)と協力したウェビナーを「世界環境デー」の6月5日に開催した。
LWCCN代表の一人、デイブ・ブックレスさん(『聖書と被造物ケア』著者)が司会。LICCで『イエスは地球を救うために死なれた』(Jesus Died to Save the Planet)を発行したポール・クーネットさん、ローザンヌBAMネットワーク代表のジョー・プルンマーさんとマーク・ポレットさんが話した。
クーネットさんは、長らくアフリカの電力会社で大規模インフラ開発を手掛けてきた。「クリーンで安全、そして信頼性が高く、手頃な価格の電力生産を重視し、活動する国々に利益をもたらす良い仕事だ」と自身の働きを紹介した。使徒3章、ローマ8章、Ⅱコリント5章、黙示録などを挙げて、万物の回復という神の使命を解説した。「私たちは神の使命に共鳴すべき。私たちが、世界を破壊した結果を目の当たりにする今日、その重要性が増します」
「福音と神の霊と教会が組み合わさって、神の変革と変化のための計画となる。教会こそが変化の触媒。私たちは、すべての被造物が祝福されるために、日々の生活の中で生き、働く、回復された人々の共同体だ。一人ひとり影響力のレベルは異なっても、職場で正義と祝福に生きるべき」と勧めた。
ビジネスの世界では、環境(Environmet)、社会(Society)、企業統治(Govenence)の三要素(ESG)が重視されている。ポールさんは、「ESGに準拠したとしても地球の回復に貢献しない場合がある。ESGのコンプライアンス(法令順守)だけでは不十分で、より大きな視点が必要」と語った。
続いてBAMについてプルンマーさんが語った。「ビジネスを邪悪なもの、目的を達成するための手段と捉えがちだ。確かに、歪んだ目的のために利用され、搾取はある。それでもなお、ビジネスは神の御心となる。申命記8章や箴言31章を確認したい」と勧めた。
被造物ケアにつながる視点として、「利益はビジネスにとって血液のようなものだ。利益還元の対象は、株主だけではなく、地域社会の人々、従業員、顧客、そして地球、という多様なステークホルダー(利害関係者)がある」と示した。
ビジネスミッションにおける4つの基本原則として、①人々に仕え、②神の目的に沿い、②地球の良き管理者となり、③利益を上げること、を挙げた。
続けて、ポレットさんは、ビジネス宣教と被造物ケアの歴史を語った。2000年ころにBAMが定義されたが、初期は環境への取り組みへの関心は低かったという。「2013年に、ビジネス宣教に取り組む企業に調査したところ、環境重視は13%だった。21年に再調査したところ、86%となった。そこで、BAMネットワークでは、環境問題対策のためのリソース構築を開始しました」
さらに調査によると、未伝道地域と水質汚染、大気汚染に強い相関関係があることが分かった。このニーズに応えるため、国際的な協力プロジェクト「Regen.Global」を立ち上げた。「土地と心の両方においてイエスの約束が豊かに実るよう不毛な心と不毛な土地を再生させたい」と述べた。
具体的なビジネス事例を、ブックレスさんと同じくLWCCN代表の一人でもある、グアテマラのベニータ・サイモン・メンドーザさんが語った。メンドーザさんが事業する地域は起業が盛んではあるが、深刻なごみ問題が起きていた。若者向けの環境教育プロジェクトを展開。「先住民の住む地域だが、生態系とつながる価値観を失っていた。私たちはアイデンティティーを取り戻し、土地や生態系と再び繋がる必要がある」と述べた。
たい肥工場を所有し、町内100世帯から勇気ゴミを集めて処理している。コーヒーショップ「ルポタイ・カフェ」を運営。自然に配慮する地元コーヒー、野菜のフェアトレードの支援、包装なしでの販売。読書支援などの交流や、若者の奨学金支援につもつながっているという。「神の国の価値観を探求するビジネスは、世の光となるべき」と語った。
質疑応答の中では、英国の4分の1の教会が取り組む環境配慮活動「エコチャーチ」や、企業の利益の在り方、GDPに代わる経済指標などが話題になった。
LWCCN主催のウェビナーは、今後も、9月4日に「子どもと若者」、12月4日に「被造
物と芸術」をテーマに開催予定。
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