戦後の教会はどうだったのか?② 声明、行動の時代背景を解説 3人に聞く

『日本カトリック正義と平和協議会50年記念 「正義と平和」の50年』評・辻子実(日本バプテスト連盟恵泉バプテスト教会教会員)

  日本キリスト教協議会の靖国神社問題委員会なら名は体を表すで、ヤスクニ問題を中心に活動しているのだろうと漠然とイメージできるのですが、日本カトリック正義と平和協議会(正平協)って、何って問われてもその広範な働きのためになかなか説明できる人はいないと思います。


 今回『日本カトリック正義と平和協議会50年記念 「正義と平和」の50年』が発刊され「取り組みの流れ」(140頁)で、横軸に「反戦平和、右傾化歴史問題への対応…」、縦軸に年代を記した棒グラフ的な年表、という優れた年表が作られ、一目瞭然に正平協の活動を俯瞰(ふかん)することができます。


 「日韓連帯―正平和協議会の日韓連帯活動」(24頁)に記されているように1970年代正平協が「まず初めに取り組んだのは、隣国韓国の民主化と人権のために献身する韓国のキリスト者に連帯し、支援することでした」(光延一郎)。


 その具体的な働きについて「70年代日本カトリック正義と平和協議会と韓国」(33頁~。古屋敷一葉)では、73年の金大中(キム・デジュン)さんの拉致事件、74年の池学淳(チ・ハンソク)さんが中央情報部に拘束され「良心宣言」を公表したこと、「市民運動やプロテスタント教会では、外国人宣教師たちが極秘に韓国から文書を運び出し、知識人がその文書を分析し、日本から世界に向けて発表するという働きが生まれました」(34頁)。この働きが『韓国からの通信・1972.11~1974.6 (TK生著、岩波新書、1974) などに結実していくことはご承知の通りです。


 1996年のマレーシア、クアラルンプールで国外退去処分、相馬信夫司教、シスター中村葉子のスナップ(32頁)などは、正平協の働きが単に日本国内に留まらずアジア諸国との連帯の中で歴史の歩みを続けてきたのだと改めて気づかされます。


 「日本カトリック教会が発表した声明文セレクション」(48頁~)では単に声明文を掲載するだけではなく、短い声明文では表現しきれない当時の時代背景などの〈解説〉を付しています。この手法は、次世代への警鐘を考える時、大切な編集方針だと思います。


 また特筆すべき働きに「湾岸戦争避難民移送のための民間機チャーター」(62頁~)があります。自衛隊の海外派兵が続く現在、改めてこの働きの意味を考えることも必要なのではないでしょうか。


 「展望」(137頁)ここには三つの重要な点があるとして、その一つに「女性・男性のならず、すべての性が参加できるということ」とあります。短い提言ですが、この提言に込められた意味は大きい思います。


 第五章資料に掲載されている声明文、「ニュースレター『JP通信』目次」を通読するだけで正平協の働きの広がり深さが見えてきます。ぜひ2025年2月現在で250号を数える「ニュースレター」の合冊版を発行して、その時々の声を歴史に残していただければと思うのは、私一人のつぶやきではないと思います。


 『カトリック 正義と平和の50年』というタイトルですが、改めて1970年代以降のキリスト教界の正義と平和の働きを顧み、そしてこれからの展望を模索する一冊としてプロテスタント関係者の方々にも一読していただきたい一冊だと思います。 

『日本カトリック正義と平和協議会50年記念 「正義と平和」の50年』同協議会編、カトリック協議会発行、B5判

注文URLforms.gle/mEHrCkTnuT6UpJ8m9(1冊あたり900円程度のカンパ)

日本カトリック正義と平和協議会

電話 03-5632-4444 ファクス 03-5632-7920

メールアドレス  jccjp(@)cbcj.catholic.jp ※(@)を@に

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