
8月15日、アラスカでトランプ大統領とプーチン大統領が、18日にはホワイトハウスで、トランプ大統領とゼレンスキー大統領が会談した。
15日プーチン、トランプ両大統領会談直前に、一時日本滞在から戻ったウクライナ宣教師船越氏が本紙に寄稿した。
◇ ◇
私たちは今日、ウクライナに戻ってきました。みなさまの尊いお祈りに心から感謝します。
今から80年前の8月15日、日本では悲惨な戦争が終わりました。
そして今日、アラスカではウクライナでの戦争の終結をめぐって米露大統領による重要な話し合いが行われることになっています。ただ、そこにはウクライナの代表者は出席しません。残念ながら、それは87年前のある状況を思い出させてしまいます。
第二次世界大戦が始まる前年の1938年、ドイツのヒトラーは、隣国チェコスロヴァキアのズデーテン地方(ドイツに隣接)に「多数のドイツ系住民が住んでおり、彼らがチェコスロヴァキア人によって迫害されているため、ズデーテン地方に住むドイツ系住民を保護するためにチェコスロヴァキアに軍事介入しなければならない」と言い出しました。
欧州で緊張が高まり、軍事力によってドイツの野望を阻止するべきか、話し合いによって解決するべきか、意見が分かれました。当時のイギリス首相ネヴィル・チェンバレンは宥和政策を提唱し、同年に行われたミュンヘン会議で、ドイツとの全面戦争を回避するためにヒトラーの要求を受け入れ、チェコスロヴァキア代表者不在のままドイツと合意し、結果、ズデーテン地方はドイツに割譲されてしまいます。しかし、ヒトラーはそれに満足するどころか、これをさらなる領土拡大への好機と捉え、39年3月にチェコスロヴァキア全土を占領、同年9月、ポーランドに侵攻を開始して第二次世界大戦が始まりました。
今、ロシアとウクライナの間にある状況は1938年当時のそれに酷似しています。ロシアは、ウクライナ東部のロシア系住民の保護と称してウクライナへの軍事侵攻を始めました。そして、ロシアはウクライナ東部四州を一方的に併合すると宣言し、国際的にもそれを認めさせようとしています。
そして、国際社会(特にアメリカ)が再びロシアの侵略に対して毅然とした態度を取ることなく、ロシアのいう「併合」を認めるようなことがあれば、それはロシアを満足させて平和が実現するのか、それとも、それはロシアの拡張主義を容認し助長するだけのこととなり、さらなる侵攻を促すことになるのか。
多くのウクライナ人が、欧州が今、戦後80年なのではなく、むしろ「戦前」なのかもしれないと強く危惧する理由がここにあります。1日も早く、持続的な平和がウクライナにもたらされることを、そして、今回の話し合いがその大きな一歩となることを期待しています。
いつもウクライナのためにお祈りくださっていることに心から感謝しています。
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