【書評】聖書を深めるどんな「扉」を開いたか 『聖書が深まる10の扉』

聖書の中心は何か? 多くの人は「イエス・キリストの十字架と復活」と答えるだろう。だが他にも重要な概念が聖書には種々ある。創造・祝福・贖い・律法・臨在・戦い・相続・祭司・さばき・平和…それらは聖書が示す倫理や神の性質を表す個別の部分なのだろうか。

『聖書が深まる10の扉 不可解を乗り越え、福音に生きるために』
原雅幸著、いのちのことば社、1,650円税込、B6変型

前述の10のキーワードで創世記から黙示録まで聖書全体を串刺しにして流れをとらえると、その言葉の発端が何か、古代イスラエルの歴史においてどのように展開され、イエス・キリストによって何が起こり、私たちとどう関連して完結するのか、スジが見えてくるー。それが、著者の前著『聖書が解る10の扉』のコンセプトだった。2冊目の本書では、結実・都・王・宥(なだ)め・安息・聖絶・神の会議・解放・裸の恥・いのちの水という、さらに10の扉を開く。


 「聖絶」の意味は敵を絶滅することではない、「安息」の本質は休息ではないなど、本書の問題提起は刺激的だ。原語の本来の意味や、その言葉が登場する時代・文化においてどのように使われていたかなど、神学書が何十ページも費やして釈義するような内容を、信徒や求道者でもわかるよう簡潔に数ページで見せてくれる。


 聖書読者を悩ませる「聖絶」のほか、 「宥め」「神の会議」「裸の恥」などスルーしがちな難概念も、これまで知っていると思っていた記事から別の新鮮な一面が姿を表す。漢字という表意文字に根ざす日本語に訳されたゆえに、私たちがその字面から理解したつもりになっていたことに気付かされる。


 たとえば「宥め」という日本語からは、「怒りを宥める」のようなニュアンスが伝わってくる。しかしヘブル語の「カファール(あるいはキップール)」のおおもとの意味は「隙間を埋めること」だという。創世記6章でノアが箱舟を造る際、神から「タールを塗りなさい」と命じられた記事の、「塗りなさい」と訳されている言葉がカファール。著者は、「これは塗料ではなく、木で造られた箱舟の防水のために、タールによって隙間を埋めることを表しています。この意味が転じて、人と人の間の『隙間』を埋めること、あるいは神と人との『隙間』を埋めることの意味で用いられるようになり『宥める』の意味を持つようになりました」と説明する。


 カファールが「宥め」として使われている記事、さらに別の局面での「隙間を埋める」の解説が続き、イエスが「宥めのささげ物」になったという深層に至る。各扉を開けると、同様に起承転結が展開されていて興味は尽きない。

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