近藤紘子さん講演 被爆証言、爆撃機の乗員を許した思い

基督教イースト・エイジャ・ミッションが運営する山上国際学寮(東京都文京区)は10月20日、市民文化講演会「平和をつくり出す人たち―心の中に平和を」を開催した。講師には、広島の被爆者で、財団法人チルドレン・アズ・ザ・ピースメーカーズ国際関係相談役の近藤紘子さんを迎えた。会場の富坂キリスト教センターで30人超が耳を傾けた。

ジョン・ハーシー著『Hiroshima』の初版を見せながら話す近藤さん

 近藤紘子さんは、父・谷本清さんとの共著『ヒロシマを次世代に語り継ぐ』の内容から話した。近藤さんは1944年11月、日本基督教団・流川教会(広島市)牧師の谷本清さんの娘として生まれる。8か月の時、牧師館で被爆。米国や米兵に対する憎しみ、復讐の念を募らせていた。
 10歳のとき、谷本清さんを取り上げた米国のテレビ番組「This is Your Life」に家族で出演。番組には、広島へ原爆を投下した爆撃機「エノラ・ゲイ」の副操縦士ロバート・ルイス氏も出演していた。蹴飛ばしてやりたいとさえ思う彼が、原爆投下を悔いて涙する姿にショックを受け、「彼も私と同じ人間なのだ」と気づく。そして自分の中の罪が次々と頭に思い浮かび、「神様ごめんなさい」と思うのが精一杯だった。
 番組の最後、近藤さんはルイス氏にこっそり歩み寄り、「ごめんなさい」の気持ちで彼の手に触れた。すると彼は、観客の方を向いたまま、手を握り返してくれたという。「この人に出会えて本当に良かった」と近藤さんは語る。

 現在に至るまで、国内外で講演活動をしている近藤さんだが、ある小学校での体験を語った。講演後の質疑応答の時間の最後に、ある男の子が質問ではなく、「次に僕が手をあげた時、近藤さんのことを思い出すようにします」とだけ発言し、直後に休み時間になり講演会は終了した。不思議に思った近藤さんはその後、「あの子は何を言いたかったのでしょうか」と教員たちに聞いたところ、「あの子は問題児なんです」との答えが返ってきた。あの子の言った「手をあげた時」は、挙手をした時のことではなく、同級生をぶってしまった時のことだった。
 「彼はキャプテンルイスの話をちゃんと聞いていてくれた。今では彼が、講演する私の背中を毎回押してくれているような思いです」と近藤さんは話した。

 谷本清さんの未発表の手記と、ジョン・ハーシー著『Hiroshima』をもとにした映画「What Divides Us」が日米合同で制作されており、近藤さんも監修者に加わっている。



『ヒロシマを次世代に語り継ぐ』
谷本清・近藤紘子 共著
B6判、112頁、1,430円税込
いのちのことば社、2025年

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