
「一国なり一民族が他に対して自己の優位を主張し、自己の繁栄のみを固守して譲らず、しかもその優位を貫徹させようとする覇道こそ、他を滅ぼすのみでなく、自らをも滅亡に至らしめる」(68頁)。今回の参議院選挙における排外主義的「日本人ファースト」を連呼する「選挙ヘイト」への抗議スタンディングから帰ってきて、この原稿を書いています。
本書の第一部は平和運動で著名な、日本基督教団広島流川教会牧師であった谷本清さんの『広島原爆とアメリカ人』(NHK出版、1976年)から転載された、リアルな被爆前後の記録です。第二部はそのお子さんで、被爆当時生後8か月であった近藤紘子さんが行ってきた講演原稿をもとに、戦後の被爆者としての平坦ではない歩みを記しています。
注目すべき一つに、「ヒロシマの思想(あるいは神学)」の成立過程がうかがえることがあります。この「思想」は原爆記念碑の碑文「安らかに眠って下さい/過ちは/繰返しませぬから」(69頁)に示されます。「繰返させませぬから」と他者に要求するのではなく、自らに修復的正義を求め戦争責任を認めるのです。キリスト者では、教会焼跡での祈り「ああ神様、私どもの罪をお赦しください」(52頁)となるでしょう。
ただ、だから原爆は「仕方がない」(65頁)と言ってすむか、谷本牧師の葛藤が描かれます。玉音放送でも「終戦」の理由が「残虐ナル爆弾」と言うので人々はそう考えたのでしょうが、「終戦」に必要ない原爆投下まで戦争を長引かせたのは天皇制を守るためだったと、現在国内外の歴史学者が指摘します。私自身被爆二世で、この8月6日は韓国の被爆二世団体に招かれシンポジウムをしますが、在外被爆者にとって原爆は明らかに「仕方がない」ものではありません。国レベルでの思惑を思えば、私にはオバマ大統領の広島訪問(2016年)も、アメリカそして日本の戦争責任をあいまいにし「仕方がない」ものにする点があると思います。
けれども本書からは一人一人の死への、出会いへのまなざしがあふれてきます。国家ではなく人間の安全保障と解放を私も求めます。敗戦後80年、あの歴史から何も学ばなかったかのように戦争が起こり、準備される今、「次世代に語り継ぐ」使命(ミッション)をあらためて思います。「世界を動かすことはできないかもしれません。…しかし、父が私に言ったことは、人から人へ必ず伝わるということです。…そして、神様から与えられた命を、最後まで全うしてほしいと願います」(107頁)。アーメン。
(評・濱野道雄=西南学院大学神学部教授)
『ヒロシマを次世代に語り継ぐ』谷本清・近藤紘子共著、いのちのことば社、1,430 円税込、B6判
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