【書評】人間グラハムを深掘りしたその内容にわくわく『ビリー・グラハム』評・守部喜雅

『ビリー・グラハム
ひとりひとりの魂と向き合った伝道者』
グラント・ワッカー著相川裕亮、田中稔十訳、新教出版社、
5,390円税込、四六判

 2018年2月18日の水曜日、グラハムはノースカロライナ州のモントリートにある自宅のベッドで、静かに息を引き取った。年齢は99歳だった。遺体を乗せた車は、モントリートからシャーロットまで、130マイルを走った。警官は敬礼し、弔う人は目頭を押さえ、見送る人は、静かにハンカチを振った。翌週、グラハムの遺体はグラハムの旧家に横たえられ、そこへは、元大統領のジョージ・H・W・ブッシュと妻のバーバラが訪れ、火曜日には、元大統領のビル・クリントンが弔問した。水曜日になると、遺体は国会議事堂の中央広場に運ばれ「敬意を表して」そこに二日間安置された。葬儀は、国葬で、福音派の流儀に従っておこなわれた。


 最新刊『ビリー・グラハム』(グランド・ワッカー著・新教出版社)は、20世紀最大の大衆伝道者と言われたビリー・グラハムの最期を、敬愛と弔意を込めてこのようにしたためている。


 日本にも大伝道集会のため4回に渡り来日し、そのメッセージにより希望への人生を体験した人々は数万人にも及び、戦後の日本宣教に多くの祝福をもたらしたグラハムの業績は言うまでもないが、その神のしもべが、母国アメリカにおいては、宗教界に限らず政治的分野で働く指導者にも多くの影響を与えたことが、綿密な取材を通し追及されている。


 13人の歴代大統領との交友があったことも驚きだが、20代初めから大衆伝道者として活躍、30代には何万という人々を集めた集会で福音を語り多くの魂をキリストに導いたその実績を詳細にわたり伝える本書は、500ページを超える大書にもかかわらず、短所を含め人間グラハムを深掘りしたその内容にわくわくしながら読み通すことができた。本書の最終章では、「ビリー・グラハムとは何者だったのか」という項があるが、残した業績に対して次のような指摘がなされている。


 おそらく、誰もが認めるように、最も大きな成果は、クルセードに来た300万人もの人をキリストに従うように決心させたことである。また、アメリカで、道徳的罪に陥った伝道者もいるが、人々は、グラハムに対してだけは、道徳的にしっかりしているという印象を持ち続けた。その働きは自分中心に行動するというよりチームとしての働きを目指し、他のスタッフからの忠告にも耳を傾けた。グラハムは賞賛を受けると、それを自分以外の者、特に神に向けるようにしていた。
  (評・守部喜雅=本紙編集顧問)

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