
歴史の中の空白、沈黙にキリスト教がどのようにかかわるか。沖縄・伊江島在住の文筆家、翻訳家の榎本空氏は、7月18日、東京・港区の明治学院大学のキリスト教研究所主催の講演会で、歴史を語る一つの試みをした。
講演題は「ある写真への長いキャプション:伊江島の土地闘争、キリスト教、証しすることの失敗について」。一枚の写真をめぐる歴史を掘り下げ、宣教師を含む様々な人物のありようを様々な描写を交えて語った。
言葉になっていない事象に向き合う
企画した同研究所員の植木献氏は、「本研究所では、キリスト教やアジアの神学、またアジア日本から発信していくキリスト教の在り方を一つの研究課題として模索してきた。長らく沖縄も課題にしたいと思っていた。言葉になっていない事象に向き合い、そこから言葉を紡ぎ出すということは、ある意味で神学、人類学と共通する特徴かと思う」と挨拶した。
榎本氏は、1歳から中学校卒業まで伊江島で過ごし、同志社大学、台湾・長栄大学を経て、米国・ユニオン神学校で黒人神学の提唱者のジェイムズ・H・コーンに学んだ。コーンの自伝『誰にも言わないといったけれど』(新教出版社)の翻訳を皮切りに、翻訳やエッセイを出版。ノースカロライナ大学チャペルヒル校で人類学を専攻し、2022年から伊江島の土地闘争とその記憶について研究している。
伊江島の土地闘争とは、1955年の「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる米軍による強制土地接収を受けた住民による抵抗運動だ。その中心となったのは阿波根昌鴻(あはごん・しょうこう)。榎本氏は晩年の阿波根と交流していた。阿波根は多くの写真を残しており、今回の写真もその一枚だ。一方、米国メソジスト派の白人宣教師ハロルド・リカードは、51年に来日し、「銃剣とブルドーザー」後、伊江島の人々の声を聴き、支援を試みた。今回榎本氏は、伊江島の歴史、宣教師の遺した資料などから語りを構成した。
米宣教師の苦悩 十字架前の青年たちの沈黙
写真には木製の十字架を囲んで、 4人の青年たちが写っている。十字架には「米人」への抗議の言葉が書かれている。榎本氏は、暴力的な接収と闘争を背景に、4人の表情に「差し迫った拒絶・拒否の態度」を読み取った。
リカードは「平和の君であるイエス・キリストのことを宣べ伝えたい。平和と創造の仕事に就きたい」という思いで来日した・・・
(次ページで、リカードの見た沖縄、十字架前の4人、過去を今に関係あるものとして覚える、など)
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