『だれを私は恐れよう 北朝鮮の刑務所で過ごした949日』
出版記念宣教フォーラム

18年間にわたって150回も北朝鮮を訪問し、人道支援を続けてきたにもかかわらず、2015年に逮捕され、死刑判決を受けた韓国系カナダ人ヒョンス・リム牧師。949日間の収監と奇跡的な解放をつづった手記が昨年12月に邦訳出版された。リム氏の来日にあわせて、26日からの3日間「『だれを私は恐れよう』出版記念 北朝鮮宣教フォーラム」(同実行委員会主催)が東京都内の会場で開催された。当日は、北朝鮮を脱出し現在は韓国で暮らす「脱北者」17人とその家族も参加し、脱北の経験と北朝鮮宣教への思いを語った。
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参加した脱北者の多くが神学生で、現在は学びながら、いずれ北朝鮮の門戸が開かれる、その日に備えている。4回のセッション「北朝鮮宣教戦略における最優先順位」「主体思想・主体教」「北朝鮮の現状」「地下教会の役割」では、8人が証しした。

ヒョンス・リム氏(右)。左は通訳の坂本兵部氏

「宣教戦略」でリム氏は、「現在、3万5千人いる脱北者に福音を伝えることが重要」、「彼らがみことばで整えられ北に入っていけば、我々は後から付いて行けばいい」、「脱北者で牧師になったものが50人、神学生が100人いる」、「統一の時には、北朝鮮全国の207の郡に100ずつ教会を建てる」、「その時は、教派を超えた一つの教会を建てることで、脱北者 教会指導者 北朝鮮問題の専門家が話し合い、合意している」とし、「北はある日突然崩れると信じている」と語った。

『だれを私は恐れよう』いのちのことば社 四六判 1,980円税込

40歳の神学生Aさんは、3回捕まった末に脱北し、中国で宣教師に出会い救われた。「絶望の中で主に出会った。今は北を愛する人を整え、統一のために備えるべき。福音は希望だ。北のために祈って欲しい」と証しした。
「主体思想」では、60歳代で神学校に入ったBさんが証しした。金日成に始まるとされるその思想は、日本でも1970年代には多くの知識人が賞賛し、学生を始めとして多大な影響を及ぼした歴史がある。Bさんは「これは、革命の主体は人民であるとしながら、人の上に国、国の上に党、党の上に首領がいる思想」、「生活全てを支配し、金一家を首領とする偶像崇拝」、「金首領の栄光を現し、命を捧げて、その思想を末代にまで伝える」、「思想が身に付いているか、毎週分かち合いをする」とその実態を説明した。
その上で、「それらはすべてキリスト教の模倣。福音にふれてそのことに気付いた。私にとっては神のみことばから創造者を知ったことがすべて」、「主体は自分、と教え込まれた北の人が福音を信じるには困難があるが、同じ思想教育を受けた脱北者が語るなら、伝わりやすい。私はそのために召されて、今韓国で学んでいる」、「金正恩もその思想の不当性はわかっているはず。彼も神にひざまづくべきであり、それが北を解放する」、「全国にある4万以上の銅像、教育施設がすべて潰れて、主体思想が禁止されるように。祈りつつ、まず神を伝えること」とBさんは語った。
毎回のセッションを通してリム氏は、北朝鮮、アフガニスタン、イラク、インド、西アフリカで実践してきた宣教活動を紹介した。2千人が一度に入れる浴場を作り、湖を田んぼにし、トウモロコシのタネを送り、自生しているブルーベリーを利用して事業を起こすなど、その働きは、現地の人が生きていくための実際の必要に応えながら、福音を届ける働きだ。最終日の講演では、それらを紹介した上で、「伝道はやればいい。やればできる」と励ました。
会を終えて実行委員長の石田敏則氏は、来たるべき北朝鮮宣教を見据え「各協賛団体も含め、今後の協力体制をどのようにするか、祈りつつ模索していきたい」と語った。

2023年01月22日号掲載記事)