北朝鮮で逮捕され、死刑判決を受けた韓国系カナダ人ヒョンス・リム牧師。「『だれを私は恐れよう』出版記念 北朝鮮宣教フォーラム」(同実行委員会主催)から、当日参加した北朝鮮「脱北者」の証しを紹介する。

◇◆◇

北朝鮮の独裁政治体制を正当化する理論として、「自主、自立、自衛」を掲げる「主体思想」がある。金日成が創始したとされるその思想は、1970年代の日本でも多くの知識人が称揚し、学生をはじめとして多大な影響を及ぼした。また、その思想と誇張された社会政策を信じた多くの在日朝鮮人が、北朝鮮に帰国して行った。彼らの帰国後の状況と現在の主体思想の受け止めについて、神学校で学びながら伝道師として教会で奉仕するD氏が質問に答えた。

 

―私の妻は、日本で生まれ育った在日3世です。彼女の両親が、その当時北が宣伝していた「無償教育、無償医療」を信じて北に戻り、その時両親と一緒に北に来ました。その妻が私に語ってくれたことです。私の妻は非常に内省的な人ですが、それは生まれつきではなくて、北朝鮮ではそうしないと暮らせないから。

彼女の父は勉強に意欲のある方だったので、北朝鮮だったら無償で勉強をさせてくれるということで、日本から渡ってきて、ウォンサン経済大学という、北朝鮮でも有名な大学で勉強しました。とても優秀でしたが、日本から来たということで、相応の昇進や仕事には就けず、その能力にも関わらず、へき地に送られました。当時は小さな店を経営しながら、とてもひどい暮らしをしていたということです。両親がいつも子どもたちに言っていたことは「決して人に心を開くんじゃない」。

周囲からいつも監視されている、そういう雰囲気の中で暮らしたので、いつの間にか妻もそういう性格になってしまった。両親は日本の生活を知っていた人なので、聞いていた話とはあまりに違う、北朝鮮でひどい目に遭ったということで、不満がかなりあった。夫婦げんかで父が「俺はそもそもだまされてここに渡ってきたんだ」と言うと、母が「あなた、口に注意しなさい」と。そういう両親の元で、妻は育ったのです。

主体思想は金日成が自分で作ったものではなくて、哲学思想に通じている参謀が作ったものです。北朝鮮の民は1940年に金日成様がお作りになったと教えられ、信じているわけです。その主体思想を本当に忠実に信じている人たちがピョンヤン、ちょっと不満をもっている不満分子と見なされている人たちが辺境に行かされます。

やはり地方に行くと、生きていくことも大変な状況です。そんな状況で、思想教育など、どれくらいできるのかと思われるかもしれませんが、うそも10回言えば本当になると、、、、、

2023年03月19日号 03面掲載記事)
 
 

□―――――――――――――――――――――――――□
【お知らせ】★週刊「クリスチャン新聞」がリニューアルしました!!★

☆新たな装い 今求められる情報を伝道牧会の最前線へ
☆紙面レイアウトを刷新 文字が大きく読みやすく
☆独自取材による特集企画で教会が今直面している重要テーマを深く掘り下げる特集企画
☆教会の現場の必要に応じた新連載が続々スタート

□―――――――――――――――――――――――――□

★「クリスチャン新聞WEB版 https://クリスチャン新聞.com/csdb/」(有料)では、
1967年創刊号からの週刊「クリスチャン新聞」を閲覧、全文検索(1998年以降)できます。