北朝鮮で逮捕され、死刑判決を受けた韓国系カナダ人ヒョンス・リム牧師。949日間の収監と奇跡的な解放をつづった手記が昨年12月に邦訳出版された。リム氏の来日にあわせて開催された「『だれを私は恐れよう』出版記念 北朝鮮宣教フォーラム」(同実行委員会主催)から、当日参加した北朝鮮「脱北者」の証しを紹介する。

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北朝鮮の独裁政治体制を正当化する理論として、「自主、自立、自衛」を掲げる「主体思想」がある。金日成が創始したとされるその思想は、1970年代の日本でも多くの知識人が称揚し、学生をはじめとして多大な影響を及ぼした。また、その思想と、「無償教育、無償医療」を掲げる誇張された社会政策を信じた多くの在日朝鮮人が、北朝鮮に帰国して行った。帰国した彼らに直接出会い、その状況を知るB氏が質問に答えた。

 

―学校時代、クラスの中に日本から渡って来た人がいた。金日成が無料教育・無料医療を施すという方針を大々的に打ち出したときがあって、日本で教育を受けさせるのは難しい、自分もそんなに勉強できなかったとそういう不満を持っていた人々が、結局その言葉にだまされて、競うように北朝鮮に渡って来た。

実際に北朝鮮に来てみると現実は全く違う。現実をいろいろ見ると、全然違うじゃないかと言うことで、すごい不満が出てきました。日本から一緒に渡って来た人たちは、「どうなっているんだ。これはおかしいじゃないか」と、こそこそ互いに話をするようになり、何となくそれが周囲に伝わって当局から監視される対象になったりした。

北朝鮮では、友だちどうしであっても、ひそかに密告するようなことが実際にある。階級を上げてやる、昇進させてやるとか、そういうエサをもって密告をさせるわけで、密告せざるをえないような雰囲気もある。北朝鮮の人は、みなそういう中にのみこまれている。だから、誰と話すときも、もしかしたら密告されるんじゃないかと言うことを気にしながら、生活しなきゃいけない、そういう雰囲気が常にあり、日本から帰国した人たちも同様でした。

様子を見ていると、日本から来た人たちは時間がたつうちに、いつの間にか「あれ、あの人どこ行った?」とだんだんいなくなってくる。で、私たちはお互いに、ああこういうことかと、目配せし合いながら、何が起こっているかを想像していました。それは、彼らのうち残った人たちも同じです。ですから何が起こっているか、自分でもわかった彼らは、もう人というのは信じられないものだと悟り、口を閉ざして、心を開かないで、生活するようになりました。

同じクラスにいた在日同胞の人も、本当に表情が硬くて暗くて、全然心を開かなった。町でも日本から来られたという方がいらっしゃるのを見たことがありますけど、もう本当に、後悔してもしきれない、嘆いて暮らしているんだということが何となく伝わってきました。

無料教育・無料医療とだまされてわたってきた彼らは、一種の批判分子として、、、、、

2023年03月26日号 07面掲載記事)

 

 

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