【映画】「神様っていると思うか?」“小さな命”巡るいくつもの問い 『時には懺悔を』評・青木保憲 グレース宣教会牧師

 「お前、神様っていると思うか?」
劇中の言葉が観(み)る者の心を深くえぐる。クリスチャンだからといって簡単に「いるよ」と答えられない「現実」がある―。本作は、私たちをそんな混沌へ引きずり込もうと襲い掛かってくる。


 人々からの侮蔑と憎しみの対象であった一人の男が殺害される。犯人は誰か? どうして殺されなければならなかったのか? そんなミステリー仕立てで物語は進む。ほどなくして9年前に起こった新生児誘拐事件が浮かび上がってくる。この男子には重度の障がいがあった。なぜ誘拐犯は障がいのある子をさらったのか? そして9年間も育て続けたのか?


この小さな命をめぐって、大人たちの思惑が交錯し始める。彼らの過去があぶり出されていく。家族の現実から目を背けてきた男、娘に捨てられた女、産んだ子を愛せなかった女、そして「生きているのが奇跡」と言われた小さな命を育てることを決心した男―。彼らの行き着く果てに、冒頭の言葉が静かに繰り返される。


障がいを負って誕生してきた命は、果たしてこの世界に生まれて幸せなのか? 家族はこの命を愛せるのか? それとも生まれてこなかった方が幸せだったのか? そう思ってしまうことは罪なのか? 悪なのか? その判断を誰が正しく行うことができるのか? 観終わって、そんないくつもの問いが頭を駆け巡った。そして次の聖書の言葉が浮かんできた。

 神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして人を創造し、男と女に彼らを創造された。 創世記1章27節

 かつて、生まれて一か月で天に帰っていった女の子の亡骸(なきがら)を抱いたことがある。先天性の疾患を持っていたこの子は、泣き声一つ上げることができなかった。葬儀の場でお母さんから涙ながらにこう尋ねられた。「先生、○○は生まれた意味があったんでしょうか?」その時も上記の聖句を私は思い出した。そして彼女にこう告げた。


 「あったと思います。神様は○○ちゃんをご自身のかたちに創造したんですから。その意味が、今は分からなくても、それを探り求める旅路を私たちは歩んでいきましょう」

あなたは本作を見て、冒頭の語り掛けにどう答えるだろうか? 教理や神学の話ではない。あなたの、そして私たちの「生き様」が問われているのだ。どうか本作を誰かと一緒に鑑賞してもらいたい。そして、ぜひ語り合ってもらいたい。

監督:中島哲也、出演:西島秀俊・満島ひかり・黒木 華・宮藤官九郎・毎熊克哉・鈴木 仁・烏森まど・山﨑七海・唯野未歩子・野呂佳代・長井短・しんすけ・山下舜太・諸角優空・柴咲コウ・塚本晋也・片岡鶴太郎
/佐藤二朗・役所広司 、8 月 28 日(金)全国公開
原作:打海文三『時には懺悔を』 (角川文庫/KADOKAWA)、脚本:中島哲也 門間宣裕、制作:TIME さざなみ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©2026 映画「時には懺悔を」製作委員会
公式HP:https://www.tokizan.jp 公式X/Instagram:@tokizan_movie

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