5月3日から5日まで、東京・台東区東上野の上野の森キリスト教会で開かれた「ジェームズ・フーストン2016上野の森キリスト教会セミナー」(同事務局主催)で、リージェントカレッジ初代学長のジェームズ・フーストン氏が「キリストの霊性の継承〜クリスチャンの関係性を見直す〜」をテーマに6回の講義を行った。今回は2日目の講演から。
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午前中最初のの講演でフーストン氏は、男性と女性の平等性ついて話した。「今日の女性にとって特に男女間の性の平等性ほど複雑で重要なものはない。この男女間の不平等の問題、男女間の関係のあり方は、①男女間の古典的な関係、②身内、友情的な関係、③無定型の自由な関係、の3つの累計に分けて考えられる。この3つは、民族的、文化的差異を含めて、男女間の関係を示したものだ」
「①は、男は外で仕事をし、女性は家で子育てに携わるもの。農村地帯でよく見られる関係で、日本では女性は母親、妻として家にいて、家事などをこなすのが普通だった。②は、男性も子どもを育てることに関わり、もう少し融合性のある関係だ。私の世代では、妻が子どもを生むとき、夫は出産に立ち合うことなく、後で生まれたことを確認するだけだった。今の若い男性たちは、生まれてくる子どもは、自分がその子を生み出したかのように喜んでいる。その面で、伝統的な関係に比べ、新しい男女の平等性というものが生まれている。こうした友情的な男女関係は、複雑な状況になってきている」

「③は、女性がより自由に、今抱えている情勢、状況に応じて行動している。もしかしたら夫婦間で、女性のほうが男性より頭がいいかもしれない。妻のほうが夫より多く稼いでいるかもしれない。家庭によっては妻が大黒柱になり、夫が子育てをするという状況も起きてくる。それでいて謙遜で、自慢することがない」
「一般的に言って、農村部や地方はいまだ伝統的な関係だ。だが、人工的な都市生活の様々な要素が男女関係に影響をもたらしてきた」とフーストン氏は分析する。
「女性がフェミニスト運動に参加する時は、必ずしも政治的要素で運動を盛り上げるというよりも、女性の心理の奥底に、子ども時代の傷が癒やされたいという動機がある」とも指摘する。「今、アメリカではヒラリー・クリントンが初めての女性大統領になりたいと頑張っているが、実際のところ、若い女性たちは共鳴していない。ヒラリーの政治的な野心に対して批判的だ。ヒラリーは、自分と同じ女性というよりは、自分たちと異なる女性と映っている。いろんな女性たちが心の解放を求めて心理療法士のところに行く。カウンセリングの仕事をしながら、自身の心の問題もカウンセリングするという状況の女性もいる。こういった問題を考える時は、常に歴史的な視点を持つことが重要だ」
「日本も母系社会(貴族社会)があり、女性が職をもつ権利をもち、女性の指導者がいた時代があった。いろいろな国の人口動態を見ると、女性が力をもっていた時代のほうが成長が著しかった」と話す。「奈良時代初期の歌人、山上憶良はすばらしい詩を残している。彼は宮廷に仕えていた官吏だが、より家族と時間を過ごすために、名誉とか地位を捨てた人で、当時では希有な存在だ。彼は我が子に『私のところにきて寝なさい』と優しく語りかける。だが、その子が突然病気になりこの世を去る。彼はこう書いている。『私は天の神に祈る。この子の命が神の定めであることは認めざるを得ない。でも、私が抱いている子が息絶えていく。これが世の現実でしょうか』と。彼は子どものうほうが天皇より大事だと言う。この詩はほんとうにすばらしい詩だ」
やがて、日本は貴族社会から部族同士が争う時代、武士の時代を迎え、男性優位の社会になっていく、それは西洋社会も同じだとフーストン氏。「こうした変化で家族の価値が低下し、将軍の治世のもとで、家族の絆が弱まっていく。政策的に男子を養子に出したり受け入れたりが非常に増えていく。家制度が発達してきたことにも関係していると思う」
(つづく)【中田 朗】
