
新刊『「同性愛」二つの見解 聖書解釈をめぐる対論』の朝岡勝氏による書評の3回目。
前回
創造の秩序の神学を吟味する
第三に「創造の秩序の神学の吟味」を挙げたいと思います。聖書的世界観や自然観、人間観の重要な根拠として「神の創造」の教えがあります。創世記1〜2章には「無からの創造」、「ことばによる創造」、「秩序ある創造」、「善き創造」など重要なポイントが示唆されています。そして3章の「堕落」の出来事によって人は「神のかたち」を毀損し、生まれながらに罪ある者となったばかりか、被造世界全体も本来の目的からの逸脱と倒錯に陥ってしまいました。聖書の語る「救済」は、こうした被造世界全体の回復と更新、完成へと向けられています。
しかしここで気をつけたいのは、「創造の秩序の神学」が過度に強調されるあまりに聖書の記述の歴史性や時代的制約が顧みられず、特定のテクストの固定化と絶対化を生み出す恐れがあるということです。
(次ページで、神学的人間論の深化、について)
