落ち穂  1980年7月、フィリピン北部ルソン島のバギオを訪れた・・・

 1980年7月、フィリピン北部ルソン島のバギオを訪れた。マニラから小型飛行機に乗り、30分のフライトである。バギオは戦中、日本兵がアメリカ兵と激戦し、その捕虜収容所には多くの日本兵が収監されていた。筆者を導いてくれた岡田実牧師も、この捕虜収容所に収監されていたのだ◆バギオを訪れた目的は、岡田牧師の戦中の足跡をたどることだ。日本で最初の良心的兵役拒否者となった矢部喜好牧師の薫陶を受けた岡田牧師が、天皇から拝受されたという名目の銃を捨てたのが、バギオの森であった。絶対に人を殺さない覚悟だったという◆軍法会議にかけられる覚悟の決断だったが、その前にアメリカ軍捕虜となった岡田牧師は、捕虜収容所で日本兵に福音を語ったという。82年、牧師退任の日、岡田牧師は悔い改めの言葉を語った。「私は、銃を捨て人を殺すことはなかったが、…戦争そのものに行くべきではなかった」