統一協会信徒らが各地の教会を訪問 IRF(国際宗教自由)サミットに参入も

東京地裁で解散命令を受けた統一協会(現・世界平和統一家庭連合)は、反対運動を展開するとともに、各地のキリスト教会を訪問している。日本基督教団は8月に注意喚起文を同ホームページに掲載するなどしている。

11月18日に都内で開かれた、「日本異端・カルト対策キリスト者協議会」(JECAC)による秋の集会では、日本基督教団カルト問題連絡会世話人の齋藤篤牧師が統一協会問題の現状について語った。

以下、齋藤氏コメントの一部を掲載し、8月に公開された本紙提携の「異端・カルト110番」の記事を転載する。

齋藤氏コメント IRF(国際宗教自由)サミットに参入も

法曹関係者の意見によれば、旧統一協会は解散命令について、東京高等裁判所へ抗告しているが、早くて年度内には決定される見込みだという。同協会は、法人解散による財産、献金の課税、清算などによる経済負担問題を危惧しているとみられる。

一方で、旧統一協会側も献金被害者に対する「補償委員会」を設置し、有名弁護士がメンバーになっている。しかし、「メシアのためならば、嘘をつくことはやぶさかではない」ことを守り続けている同協会がアピールする「健全化」は、自己保全のためのポーズにすぎないと考える。

去年の夏、女性3人が、私が牧会する仙台の教会を訪問した。「近くの教会から来ました」というので確かめると世界平和統一家庭連合(旧統一協会)だった。「信教の自由についてどう考えるか」「解散命令で信じる自由が奪われる」などと話したので、「法人解散でも信じる自由は奪われない」と答えると驚いた様子だった。

反共産主義で利害が一致することから、旧統一協会は、トランプ大統領が後押しする米国のIRF(国際宗教自由)サミットに資金提供を行い、参入もしていると主催者側から聞いた。旧統一協会側は「自分たちは日本国内の共産主義勢力(教会や弁護士など)によって迫害されている」とサミットにおいて主張している。昨年は日本でIRF(国際宗教自由)サミット・アジアが開催され、当初、旧統一協会の現実についてスピーチを依頼されていたが、妨害されその機会は奪われた。しかし開会祈祷を任されたので、健全な「信教の自由(信じる自由・信じない自由)」が行使されるよう祈った。

統一協会は「信教の自由・宗教弾圧」キャンペーンを展開し、全国各地でパネル展・講演会など、正体を隠しながら実施している。キリスト教会でも一定の活動・支持者が存在する。

【異端・カルト110番】解散命令は「信教の自由侵害」?統一協会アピールに日本基督教団カルト問題連絡会が注意喚起 2025年8月30日

教会参加や“宗教間対話”の動きに警戒

高額献金や霊感商法の問題をめぐって今年3月に東京地裁から解散命令を受けた統一協会(現・世界平和統一家庭連合)が、解散命令は信教の自由を侵害するものだとして、宗教界へ連帯を求める動きを強めている。そうした中で、キリスト教界では一部に、解散命令を問題視する趣旨の集会が開かれたり、反対署名を呼びかけたりする動きも出ている。

世界平和家庭連合のホームページでも「不当な解散命令」だとアピールする記事が増えている

一方で、日本基督教団カルト問題連絡会は8月16日、「統一協会の接触に関する注意喚起」をホームページ上に発表した。その背景には、全国のキリスト教会から「統一協会のメンバーが自分の教会を訪れ、礼拝や聖書研究祈祷会などの集会に出席させてほしいとお願いしてくるが、どうすればよいか?」という相談が寄せられている実情がある。

同注意喚起によると、統一協会は解散命令が出る以前から「統一協会の解散命令は国家による信教の自由の侵害だ」「信教の自由を守るために同じ宗教者として解散命令に反対してほしい」などと、団体の擁護を求めてキリスト教会の信徒や牧師にアンケートの協力や反対運動の参加を呼びかけてきた。最近では「統一協会の信者ですが、そちらの教会にも出席させてほしい」と集会への参加や宗教間対話を目的に掲げて、キリスト教会を訪れる事例が、あちこちで確認されているという。

同教団カルト問題連絡会では、「このように、統一協会のメンバーであることを明かして、キリスト教会の礼拝や集会に参加しようとする動きは、全国で同時期に行われていることから、信者個々人の意志による行動というより、組織的な行動」であり、「そこには『実際にメンバーと話してみると、普通の宗教団体で、他宗教との対話を大事にしている人たちだ』『世間の風当たりは強くなっているが、そんなに悪い人たちじゃない』『彼らは自分の信仰を守りたいだけだ』と思わせ、『一緒に信教の自由を守るため、味方になってください』という要請を断りにくくする狙いがあると思われます」と分析している。

これに対して同注意喚起は、

▶︎信教の自由は、宗教を「信じる自由」と「信じない自由」の両方が尊重されて成立するものであり、統一協会の偽装勧誘・霊感商法・不安や恐怖を煽った高額献金に見られる悪質な手口は、明らかに「信じない自由」を奪い、個人の自己決定権を侵害するもので、単なる布教の域を超えている

▶︎今回の解散命令は、特定の思想信条を持つことを禁じるために決定されたものではなく、宗教活動を名目にした不法行為の被害拡大を防ぐために決定されたものである

▶︎統一協会の被害者家族や元脱会者、元「宗教二世」、救出支援に携わってきた弁護士、臨床心理士、公認心理士、社会福祉士、ジャーナリスト、宗教者など、多くの市民が、安倍元首相の銃撃事件前から、長年にわたって被害の実態を訴え続け、対策を求めてきた結果、ようやく下された決定である

の諸点から、次のように教会の対応を促している。

「今後、統一協会の信者を名乗るメンバーから『そちらの教会に出席させてほしい』とお願いされた場合は『キリスト教の教会で、文鮮明や韓鶴子をメシアと信じて礼拝することを認めることはできません。統一協会の信仰を持ったまま、一緒に礼拝したいという要望には応えられません』『会衆を他の集会や運動へ誘ったり、連絡先や住所などを聞き出したりという行為もお断りしています』というふうに説明し、会衆の安全を確保するよう努めてください。」

その上で、「しかし、統一協会の教えに疑問があり、キリスト教の教えを学んでみたい」「脱会するべきか迷っている」という方の話はよく聞いて、相談に乗っていただけるようお願いします。気になることや分からないことは、各教区の対策委員会かカルト問題連絡会のメール窓口へご相談ください」とも呼びかけている。

「統一協会の接触に関する注意喚起」全文を掲載した日本基督教団ホームページはこちら。同じページに、併せて「摂理・新天地による生徒・学生への偽装勧誘に関する注意喚起」も掲載されている。

統一協会の接触に関する注意喚起  高額献金や霊感商法の問題をめぐって2025年3月25日に統一協会(世界平和統一家庭連合)が東京地裁で解散命令を受けました。その…
uccj.org

摂理・新天地による生徒・学生への偽装勧誘に対する注意喚起も

同ページでは、併せて「摂理・新天地による生徒・学生への偽装勧誘に関する注意喚起」も発表されている。信者に対する性的暴行で教祖が実刑判決を受けた「キリスト教福音宣教会(摂理、JMS、モーニングスター)」が、一般的なキリスト教会のメンバーを装って大学キャンパスで学生たちに声をかけ、集会に誘うケースが報告されているという。

また、既成キリスト教会の乗っ取り被害が訴えられている「新天地イエス教証しの幕屋聖殿(新天地)」が、オンライン上の外国語会話や出会い系サイトなどで、zoomを使った心理学・占い・聖書の勉強などに誘って、団体の教えを刷り込んでいくなど、巧妙化する最近の手口に警戒を高め、対策を強化するよう呼びかけている。

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