日本ローザンヌ新体制に 「世界の視点で日本を」バックホルツ新委員長に聞く

 世界的な宣教運動、ローザンヌ運動を日本において推進している日本ローザンヌ委員会は、新委員長にバックホルツ美穂さん(日本聖契教団東京ライフチャーチ共同主任牧師)を6月9日、選任した。新たな委員も加え、新体制がスタートした。バックホルツ新委員長に展望を聞いた。

バックホルツ美穂さん

 メンバーに新世代 2050年見すえ

 同委員会メンバーは、バックホルツさんに加え、五十音順に、池淵亮介さん(キリスト者学生会主事)、一場茉莉子さん(米国サンタバーバラ ベタニヤ会衆派教会 日本語部牧師)、大庭貴宣さん(キリスト聖書神学校教授)、小山健さん(岐阜純福音教会牧師)、品川謙一さん(ウェブエンジニア、東京キリスト合同神学院教授・理事)、篠原基章さん(東京基督教大学学長)。それぞれ同委員会、カレント、関西分室、国際協力・渉外、総務、日本YLGen、R&Dなどの各部門を担当していく。

 前委員はシニアサポーターとして、適宜委員を支援し、アドバイスを提供する。また運営面では、主事体制から複数の有給スタッフによる事務局体制へと移行し、立石充子さんは主事を退任し、当面、事務局スタッフの一員を務める。

 ローザンヌ運動は、世界のプロテスタント福音派の一致と世界宣教協力を進めるために、1974年にスイス・ローザンヌで開催された「第一回ローザンヌ世界宣教会議(世界伝道会議)」から始まった。「ローザンヌ誓約」の伝道と社会的責任や、未伝部族、といった概念は、その後の世界宣教の視野の拡大と推進に影響を与え続けている。

 現国際総裁のマイケル・オーさんや、元国際総裁のダグ・バーゼルさんは日本で宣教師として活動。元国際総主事の山森鉄直さんなど、要職で日本関係者がかかわってきた。1974年の第一回日本伝道会議の主講師には、ローザンヌ誓約起草者で神学者のジョン・ストットが立った。50周年を迎えた昨年は「第四回ローザンヌ世界宣教会議」が韓国・仁川で開かれ、世界約200か国から約5,400人が集い、様々なテーマの「協働アクションチーム」が400以上立ち上がり、2050年を見すえた宣教協力が継続的に進められている。

 以下、バックホルツさんへのインタビュー。

「ブリッジ世代」としてシニア、若手をつなぐ

―ローザンヌ運動との出会いは、いつからでしょうか。

 米国のゴードン・コンウェル神学校で学んだ時代に、ダグ・バーゼル先生との交わりを通して、関心を持ちました。実際にかかわるようになるのは、2019年に参加した東アジアYLG(若手リーダー集会)からです。この世界的な運動とかかわり、その視点をどう日本に落とし込めるかと祈り求めていました。

 23年から日本ローザンヌ委員に導かれ、カレント部門で、ローザンヌ・ビジョン・フロンティア(LVF)の準備にかかわり、昨年の世界宣教会議に向けた作業部会での準備にも多少かかわらせていただきました。昨年7月は、東アジア地域リーダー会議にも参加して、東アジアの7つの国と地域のリーダーたちと対面で交流し、世界宣教会議中の地域別集会への備えができました。

 私としては、つなぐ世代、「ブリッジ世代」として、長年宣教をリードしてきたシニア世代と、若い世代の間の架け橋としてつなぐ役割があると感じていました。

―今回委員長、という声がかかったとき、どんな思いだったでしょうか

 自分なりに責任をすごく感じました。私には他の働きも様々あり、教会、教団での役割を持ち、実は、米国のトリニティ神学校の博士課程で学ぶ学生でもあるんです。ローザンヌ運動では、小さなことで応答できればと思っていたので、委員長のことは、思いがけない変化球でした。重圧で眠れない夜を過ごしましたが、主が望まれるなら受けるべきではないかと、祈りのジャーナルを振り返りながら、主の導きを感じ、応答させていただきました。

 先日、新メンバーで委員会をしました。まだまだ話し合いの途中です。ローザンヌ運動は世界でも非常に大きいですし、日本だけでも多くの担い手がいます。一人のビジョンだけで決まるものではないので、皆さんと話し合いながら、今後の方向性を模索したいと思います。

―ところで、博士課程では何を学んでおられるのでしょうか。

 教会ベースの開拓者育成ということをテーマにしています。もう私たちも開拓10年がたってしまっているんです。どう開拓者を育てるか、スモールグループを増殖するかが課題となっています。すべてを神学校任せにして、卒業生を探すだけでなく、各教会が自分たちの教会の中で開拓の担い手を育てる責任があると思います。それができれば、日本の開拓宣教は進むと思うんです。自分たちの教会が抱えている課題を研究しながら、解決策を見つけようとしているところです。

多世代、ディアスポラ、女性リーダー、日本での文脈化

―前委員会からは、どんなことを期待されたのでしょうか。

 世界もそうですが、日本のローザンヌ運動も広がっています。各部門があり、前委員のシニア世代の活動も続きます。それぞれの部門の働きがどう広がり、それぞれの世代がどう輝いていけるか。そのとりまとめ役が一つです。

 もう一つはディアスポラ化。世界全体でもそうですが、日本でも2070年には人口の10%が外国人となると言われています。その中で、わたし自身、米国人の夫と結婚した国際家族であり、バイリンガルの国際教会で牧会をしていることに意味があるのではないか、と。

 さらに女性のリーダーであることの意味もおっしゃっていただきました。日本では、女性リーダーはまだ珍しい。男性と女性が協力して貢献していくことで、より宣教が加速すると思います。

 そして今、委員で話し合っていることは、ローザンヌ運動の4つのビジョン、①すべての人に福音を、②すべての民族と場所に弟子を育てる教会を、③すべての教会と分野にキリストに似たリーダーを、④すべての社会領域に御国のインパクトを、をどう日本の文脈に落とし込むか、ということです。

―委員の皆さんはどんな方々ですか

 一場さんは、27年にブラジルで予定されている世界規模のYLGの準備委員であり、日本YLGenの共同代表です。ローザンヌには、具体的なテーマに取り組む様々な課題グループがあり、また世代間のギャップを取り扱う働きも始まりました。小山さんは、この課題グループにおける世代間のギャップを取り扱う働きに携わっています。大庭さんは、国際世代部門(Generations Department)とつながり、日本YLGenの共同代表です。篠原さんは神学校校長、宣教学者、品川さんは、元JEA総主事、牧師、ウェブエンジニアとして研究開発(R&D)を担当してくださいます。池渕さんは、学生宣教、超教派青年宣教や関西でのネットワークを生かしていただけると思います。それぞれがネットワークを持ち、それが反映されればと願っています。

(次のページでは「日本だけで宣教は自己完結しない」)

ローザンヌ・ビジョン・フロンティア「アルファ世代と考える宣教の未来シリーズ」(全3回:8月、11月、2月予定)の第一回が8月18、19日(申込締切8月9日https://mailchi.mp/dcb82413dbca/jlc-no4-13838568)に開催予定。アルファ世代のディアスポラやAI(人工知能)について、長谷川与志充さん(東京JCF協力牧師)、中村恵久さん(CALM代表)らの事例を聴き、参加者で語り合う。