【レビュー】『あしたは必ず来る』『老いをどう生きるか』『近代世界と宗教』

 初代教会が専門で、各キリスト教学校学長など要職を歴任、5代目のクリスチャンでもある著者が、自身の家系の「初代」を探る。『あしたは必ず来る 明治から現代までのファミリーヒストリーを辿りつつ』(湊 晶子著、教文館、千100円税込、A5判)は、各時代の資料を集め、通説に訂正を加えながらまとめる。両親や祖母の祈りと聖書に生きる姿、自身の戦中戦後の苦労、若くして夫を失いながら子育てと仕事に努めた経験も踏まえ、家庭、仕事、キリスト教教育についての見解をまとめる。90歳をこえて同書の執筆を始めた「あきらめない」姿がそれらを体現している。


 礼拝出席者の平均年齢が90歳にも及んだ多磨全生園内の秋津教会で長年牧会した著者は、80代後半で教会閉鎖と共に引退。『老いをどう生きるか』(渡辺正男著、日本キリスト教団出版局、2千200円税込、四六判)では、前半で老いの意味や聖句引用から考察。後半は、秋津教会での礼拝説教集で、老いの視点からクリスマス、病、最期、などを様々な交流の思い出とともに語る。


 フランス革命、ナポレオン戦争をへて、現ドイツ領域でも世俗化が進んだ。『近代世界と宗教 -19世紀ドイツのカトリック社会・政治運動-』(桜井健吾著、教文館、5千940円税込、A5判)の著者は世俗化がむしろカトリックの自己革新、社会・政治運動の契機になったとして、信徒大会、慈善団体、労働組合、宗教政党の動向をみる。プロテスタントが複数化するのに比べ、カトリックは一陣営に結集する。「近代世界の『分離と分化』の構造を前提にした上で、どのように『全体的な使命』を果たせるか」を問う。

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