【書評】松江バンドの系統克明に 「生ける水の川」流れ出る 『松江バンドの歴史と信仰』評・藤本満

 著者は、著名な牧師・教師であり、聖書に精通した霊的な迫りのある聖会説教/神の臨在に包まれた祈り/誰にでも寄り添う牧会と伝道熱心さについては、読者諸氏も周知のことであろう。


 バックストンを中心とする松江バンドは、弟子が弟子を生み、聖霊に感化された祈りと説教をもって、山陰伝道にとどまらず、各地の聖会や超教派の働きにいのちの息吹を吹き込んできたことを、本書は系統立てて説き明かしている。本書を読むと、この遺産が引き継がれてきた秘訣(ひけつ)は、弟子が弟子を育ててきた幸いにあることがわかる。著名な牧師・伝道者たちの生い立ちや交流まで明らかになる。特に評者には、538~551頁の「松江バンドと教会音楽」における『聖歌』の編者である中田羽後、そして1931年の『讃美歌』の主査を努め、日本基督教団『讃美歌』の完成へと導いた由木康が共に、松江バンドの直接的感化にあったとの解説は、新鮮であった。


 そしてまた、2015~20年にバックストンの説教などを現代語に直した『バックストン著作集』が発行された意義がよくわかる。著者は、この著作集の刊行にあって中心的な役割を果たした。その意義はおそらく、明治期に教会を開拓した勢い、そして戦後の再建に尽くした宣教師や彼らに導かれた邦人伝道者の霊的遺産が、退潮期を迎えている日本の教会に霊の力を与えるという信念なのであろう。


 本書を生み出した知的・霊的エネルギーは、これまでの著者の働きのすべてを上回るように思う。バックストン、そして松江バンドという泉に触れて生かされた人々と出来事、それらを統合している聖霊の臨在が今によみがえる。その膨大な解説が語り聞かせているかのように勢いがある。時代的・系統的な章の組み立てには、「よくぞここまで!」と感嘆する。著者の知的エネルギーは、本書において最高点に達している印象がある。松江バンドの流れの中で生かされてきた人々とその信仰を克明に解説することで、本書から「生ける水が川となって」流れ出ている。読者は、かならず新たな気づきを与えられ、霊的に豊かにされ、神への感謝に導かれるであろう。


 とは言え、本書を業績的に評価することを、著者は嫌うに違いない。なぜなら本書において、著者はバックストンの長男ゴッドフレーが父の信仰を記した『信仰の報酬』というタイトルの意味に何度も言及しているからである。それは、「父の生涯と奉仕は彼の献身や犠牲によるものではなく、ただ単純に主イエスを信じ、頼り、主イエスに任せきる『信仰』に対する神の『報酬』であった」(608頁)と。それは、本書と著者にも当てはまる。この大著は、著者の信仰に対して与えられた神からの報酬である。
(評・藤本満=インマヌエル綜合伝道団・インマヌエル高津教会牧師)

【特典付キャンペーン中 記事すべてを閲覧可能、充実した定期購読がお得です】

新規で紙版、電子版、併読版いずれかの年間購読をお申込みの方にもれなく
話題の書
『平和へのはじめの一歩』(朝岡勝著/いのちのことば社刊)を進呈! 詳しくはこちら

こちらの記事もオススメです

シリーズ●教団・教派を知る 日本イエス・キリスト教団 バックストンの働きと信仰を継承して戦後創立
日本イエス・キリスト教団 写真上=創立時の教団委員会、下=2001年7月の50周年記念大会、神戸ポートピアホール、千700名参加、 本部事務所=兵庫県神戸市兵庫…
xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com

【レビュー】『第二次トランプ政権とアメリカの福音派』『キリスト教シオニズムとは何か』『キリスト教入門の系譜』
 『福音派』(加藤喜之著、中公新書)をきっかけに、「政治勢力」としての「福音派」への関心が高まっている。 『第二次トランプ政権とアメリカの福音派 分断と対立の時…
xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com

牧会・宣教に役立つ情報、
    多様な連載を掲載!
紙面、ウェブを刷新し、さらに充実しました。

電子版:速報(無料)・詳報(有料)記事を随時掲載、紙面ビューアー ※バックナンバー閲覧可能
紙版:月2回発行

■購読料
紙版(送料込)
月額1,226円(税込)(オンライン申込・限定クレジットカード支払いのみ)
6か月6,756円(税込) ※本紙代が10%お得です
年額13,512円(税込) ※本紙代が10%お得です

電子版
月額900円(税込)
年額10,300円(税込) ※毎月払いより約5%お得です

紙・電子併読版(紙版の年額+2500円で電子版併読が可能です)
月額1,400円(税込)
年額16,000円(税込) ※毎月払いより約5%お得です

■新ご注文受付サイト

https://クリスチャン新聞.com/start-checkout/