“面白さ”で聖書を伝える 『神探偵イエス・キリストの冒険』清涼院流水 普段着の読書作家編第6回

『神探偵イエス・キリストの冒険』
清涼院流水 著
2024年、星海社、304頁、1,650円税込

 今回、紹介する作品はミステリ小説『神探偵イエス・キリストの冒険』である。著者は、前回紹介した『どろどろの聖書』と同じく清涼院流水氏だ。

 本作は、老齢を迎えた使徒ヨハネの視点で過去を回想していく、イエス・キリストを名探偵役とした連作短編ミステリである。

 ……タイトルを見て眉をひそめる方もおられるかもしれないが、もちろん私もである。なんなら、この本の存在を知ったのが前回の記事を構想していた時だったものだから、このまま記事を書き進めてもよいのか……? と真剣に悩んだぐらいである。

 まったくの杞憂(きゆう)であったことだけは先に記しておきたい。

 さて、常々感じていることだが、クリスチャンは、しばしば〝娯楽性〟を軽視しがちな傾向があるように思える。一昔前はスポーツ観戦でさえよくないものと言う方もいたとか。

 しかし〝娯楽性〟すなわち面白さとは、決して軽視されるべきものではないと私は考える。なぜなら面白さとはすなわち読ませる力だからである。多くの人は、その本が面白いから読む、面白そうだから読むのだ。

 本は存在することでなく読まれる時にこそ、その真価を発揮する。仮にどれだけ意義深く、格調高い文章で書かれていたとしても、どれだけ間違いのない論説が載っていたとしても、読まれなければ意味がないのだ。

 そういう見方をするならば『神探偵イエス・キリストの冒険』は、謎解きの「面白さ」で、聖書のメッセージを「読ませる」ことを目的とした本と見ることができるかもしれない。各話の後にはTIPSが設けられており、そのエピソードが聖書のどこに載っているか、をはじめとした関連情報が記載されている。だから、読みだした時には、聖書の導入本として紹介すべき本だろうな、と思っていた。

 しかし、あとがきまで読み終えた時、その見方は、いささか不誠実かもしれないと思わされた。むしろ、そこから読み取れたのは、一人のミステリ作家の、クリスチャンとしての情熱だ・・・

(次ページ[下部ボタンから]で、本書のバランス感覚、イエスの奇跡の描写、など約1300字)

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